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ノリ大泣き育成選手からMVP/日本S

- ヒーローインタビューで涙を見せるMVPの中村紀洋(撮影・清水貴仁)
<日本シリーズ:中日1-0日本ハム>◇第5戦◇1日◇ナゴヤドーム
どん底からの頂点へ-。日本シリーズMVPは、中日中村紀洋内野手(34)が獲得した。1月にオリックスを自由契約になり、野球ができなくなる危機からたどり着いた中日で、育成選手からはい上がった。「野球ができることの感謝を胸に」。5試合で18打数8安打の4打点。文句なしの「シリーズ男」で殊勲を獲得した男は、ヒーローインタビューで、はばかることなく泣いた。
お立ち台の中日中村紀が両手で顔を覆った。「今年1月からいろんなことがありましたけど…。ドラゴンズさんに本当に感謝しています。本当にありがとうございました」。MVPインタビューの語尾はかすれ、フラッシュが涙に反射した。
日本一決戦。この日も存在は絶大だった。2回無死一塁でダルビッシュから二塁打でチャンスメーク。1死後の平田の犠飛による虎の子の1点を呼び込んだ。シリーズ5試合通算18打数8安打4打点。ただ1人、5試合とも安打を放った。
オリックスとの契約がこじれ、移籍先探しも難航した。チャンスをくれたのは落合監督。キャンプに丸刈りでテスト生として参加、育成枠で拾われた。当初年俸は昨季2億円の50分の1、400万円(推定)。背番号は「205」。まさに裸一貫の再スタートだった。「(同じように)リストラされた人たちにも、いつか結果が出ると、自分が示したかった」。同年代のサラリーマンと変わらない年俸など、野球を続けるため取り巻く状況、条件はすべて受け入れて再出発した。支配下選手となって背番号は99になった。
支えたのはただ1つ、かつて年俸5億円を稼ぎ2冠王に輝いた打者としてのプライドだ。その生命線である左手小指付近へのこだわりは捨てなかった。近鉄時代の96年に左手を骨折。豪快なフルスイングが持ち味だが、左手首への負担軽減のため、グリップエンド付近に自らテーピングを施して使い続けてきた。現役時代に手袋も使用せず素手で打った落合監督からは夏場に、テープを外すよう求められた。
1度は従った。しかし、すぐ元に戻した。「自分のスイングができるようになりたいから」。復活ロードへと導いてくれた恩師の教えに背いてでも、誇り高き強打者の“聖域”は守り通した。こだわりのバットで勝利につながる安打を重ね、自身の復活ストーリーを紡ぎ出した。浪人の危機まで追い込まれて幕を開けた07年。育成選手から日本シリーズのMVPへ。「ここにいること自体が信じられない」。シーズンを締めくくる歓喜の輪の中心に、どん底からはい上がった背番号99がいた。【八反誠】
[2007年11月2日10時7分 紙面から]
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