ダル&涌井撃ちだ!

 広島の新人入団会見が16日、同市内のホテルで行われた。1位の岩本貴裕外野手(22=亜大)2位の中田廉投手(18=広陵高)ら5選手が、ユニホームに袖を通し、気持ちを新たに活躍を誓った。即戦力外野手として期待のかかる岩本は同世代の日本ハム・ダルビッシュ、西武・涌井との対戦を熱望。先にプロで活躍している同期のスターたちに1日も早く追いつき追い越すつもりだ。

 短い言葉に決意が込められていた。「同期のダルビッシュ、涌井と対戦したい」。甲子園をわかせた同級生はずっと先へ行っている。決して焦らず、ゆっくりと、しかし必ずいつかとらえてみせる。

 岩本は高3の夏、4番エースとして、広島商を16年ぶりの甲子園に導いたが、初戦で敗れ両投手との対戦はかなわなかった。大会初日で甲子園から姿を消し、2人の快投をテレビ越しに見ることしかできなかった。プロではすでに「スター」の域に達している2人。刺激にならないはずがない。「早く試合に出たい」。意気込みが言葉の端々に表れていた。

 持ち味は反対方向への長打だ。流すのではなく、フルスイング。体を柔らかく使い、ボールをひきつけてたたく。フリー打撃から「左翼方向への打球」を常に心がける。「反対に引っ張る感じ。球が切れている時は力が逃げている」。広角打法の面目躍如。「左方向」へのこだわりは強い。

 新球場の左翼ポール際のフェンスは“岩本仕様”になる。当初7メートルの予定だったが、岩本を獲得できたことによって3・6メートルに。打球が左翼席に入りやすいようにするため、岩本の特色を生かすための措置だ。それほどの期待をかけられているが、「本塁打は意識しない。どんな球場でも自分のプレーを」。あくまでも自然体で臨む。

 最近の愛読書は阪神金本の「覚悟のすすめ」。広島時代の金本の背番号「10」を受け継ぐ。いくたびの故障を乗り越え試合に出続ける虎の主砲の「覚悟」を文面から感じている。「金本さんはケガが多かった。でもチームのために試合に出場し続けた。そして常にチーム打撃を心がけている。プロは個人タイトルにこだわるのかと思っていた」。

 新ユニホームに袖を通した未来の主軸候補は満面の笑みを浮かべた。少年時代、足しげくかよった広島市民球場の外野席。前田智、緒方、金本のプレーに酔った。「小さいころからカープを応援していました。今度は、子どもたちのあこがれになれるように」。丸刈りから少し伸びた髪の毛をさわりながら、岩本はつぶやいた。【網孝広】