エモやんに追いつけ、追い越せ!

 阪神にドラフト1位指名された法大・二神一人投手(22)が20日、神奈川県川崎市内のホテルで契約金1億円+出来高5000万円、年俸1500万円で仮契約を結んだ。阪神側は黒田編成部長、菊地東日本統括スカウト、葛西スカウトが出席。ドラ1右腕は、同じ高知出身選手で最多のプロ通算113勝を挙げ、法大、阪神の大先輩にもあたる江本孟紀氏(62=野球評論家)を目標に掲げ、将来的には「高知NO・1投手」を狙う。(金額は推定)

 郷土愛は人一倍強い。報道陣からこの日、出されたクイズ。もちろん、答えは知っていた。高知出身の最多勝男は誰?

 二神は間髪入れず即答した。「江本さんです。法政大の先輩の。113勝ですよね」。100点満点の解答だった。

 あこがれの存在だから当然か。江本氏は地元高知の英雄だ。名門高知商出身で南海、阪神などで活躍。プロ実働11年で挙げた通算勝利数は113を誇る。同県出身選手の中で歴代最多の白星をつかみ、二神にとっては法大の大先輩にもあたる。同大の新年会はもちろん、昨夏に北海道で大学アジア選手権が行われた際にもあいさつをした間柄。「(今後も)機会があれば話を聞きたい」と尊敬するほどの相手だ。

 だからこそ、その背中を追いかけたくなるというもの。「(113勝という)偉大な記録がある。自分も代表というか、高知のピッチャーといえば二神、と言われるように頑張りたい。将来はそういうところを目指して取り組んでいきたい」。遠く、長い道のりになるのは百も承知だ。それでも二神は自分自身を甘やかさず、あえて高いハードルを設定した。

 プロ入り前の準備は着々と進めている。現在は自分で作成した練習メニューに励む毎日だ。「今の自分ではまったく通用しない。基礎体力をできるだけ作っています」。投球をキャッチボール程度に制限し、長距離中心の走り込み、体幹トレーニングなどで黙々と汗を流す。「地味ですが…。太く長くやって数字も付いてきてくれたら。目の前の1つ1つを信じて積み重ねていきたい」。

 この日は球団から練習法のノウハウが詰まった書類をもらい、いよいよ本格的にプロ生活がスタートする。仮契約を済ませた若武者は「日に日に実感がわいてきています。今はユニホームを着る機会がなくなっている。早く野球をしたい」とニッコリ。縦じまに袖を通す瞬間が待ち切れない様子だった。

 球団の評価は高い。担当の葛西スカウトは「1年目から1軍でしっかり投げることを期待していいと思う」と太鼓判を押す。背番号はエース番号「18」が有力。先発ローテ入りの期待も大きい。「開幕1軍を目指して、期待に応えられるように頑張りたい」。二神は最後、表情をキリリと引き締め直した。

 「高知は自分が生まれ育った故郷、ふるさと。新聞、テレビで活躍を見せられるように頑張りたい。それ(地元の期待)が力になる」。“いごっそう”の目標はデカく、そして頼もしい。