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2010年9月21日

小関順二のドラフト日記(9・13~19)

クラブ選手権で最高殊勲選手賞を獲得した所沢クラブの片山(元ヤクルト)

 ◇9月13日(月)自宅

 この13日現在の投手成績を見ると、規定投球回に達しているのはセ・リーグ9人、パ・リーグ16人と大きく差がある。翌14日の日刊スポーツはこの問題を取り上げ、パの現場の声を次のように紹介している。

 「パの投手の方が、相対的に力量が上というのが一般的だ。ダルビッシュ、涌井、和田、杉内、岩隈、田中、金子千…。スピードと強さ。直球の質の高さがセの投手と比べて『単純に上回っている』と言う。沢村賞も過去5年はパ投手が独占している」。

 確かにそういうことなのだろうが、その原因として見逃せないのがFA・ポスティングシステムとドラフトだと思う。

 メジャーリーグや巨人、阪神に主力が数多く流出したパの選手獲得方法は、ドラフトだけしかないと言っても過言ではない。しかし、大学・社会人の一流は93~06年まで続いた“逆指名”があったので獲得が難しく、それなら“逆指名”がない高校生の一流を1位で獲得して、早い抜擢によって一線級に育て上げようと考えざるを得なかった(日本ハム、西武、ロッテはとくにその傾向が強い)。それがダルビッシュ有(日本ハム)、涌井秀章(西武)、唐川侑己(ロッテ)、田中将大(楽天)の活躍につながっている。モノになれば大きく育つのが高校卒選手の特徴なので、現在の状況(規定投球回到達選手の多さ)は当然といえる。よく、パは指名代打なので代打による途中降板がないのがセと異なる、と言われるが、セが指名代打を採用していても状況は変わらなかったと思う。

 今現在、ダルビッシュ、岩隈のメジャー移籍がまことしやかに囁かれている。もしそうなれば大打撃を受けることは間違いないが、パ各球団にとってエース級の流出は想定内の出来事。既に手当はできていると思っている。

 ◇9月14日(火)西武ドーム

 全日本クラブ野球選手権を見に西武ドームに足を運んだ。日常的に見ている野球と空気が違うのは、クラブ野球が勝つことには一生懸命だが汲々とはしていないためだろう。その日常的な試合と異なる4試合の中でもドラフト候補、あるいはドラフト候補予備軍と言っていい選手がいた。

田崎史明(ガッツ全栃木野球クラブ・投手=24)右右 180-73

吉永浩之(大和高田クラブ・左翼手=23)左左 172-75

佐川貴啓(大和高田クラブ・一塁手=26)右左 173-88

 田崎は1イニングだけの登板でも素質のよさは十分に感じることができた。ストレートの最速は139キロ。115キロ程度の小さい縦カーブもよく、ノートには「ちょっとした掘り出し物」と書いた。よくないのは左肩の早い開きで、これがストレートの抜けや右打者の外角へのボールの集中を招いている。さらに言えば、140キロの壁もこの左肩の早い開きのためだろう。いずれにしても、もう少し長く見たかった。

 ◇9月15日(水)西武ドーム

 第2試合のエイデン愛工大OB BLITZ(以下エイデン)-和歌山箕島球友会(以下箕島球友会)戦の7回裏に着くと、既に巨人のスカウトが2人いた。さすが育成に力を注いでいるだけある。そして第3試合の全足利クラブ(以下全足利)-新日鉄大分ベースボールクラブ(以下新日鉄大分ク)戦の前には阪神スカウト2人、ソフトバンクスカウト4人も姿を見せた。神宮球場では東都大学野球リーグの亜大-国士大、国学大-青学大が行われているはずなのに。第3試合が待ち遠しくなったが、その前に第2試合に登板した箕島球友会の三宅悠(23=右右、184-78)にも少し触れる。

 田崎と同様、ストレートの球速が140キロに届かなかったのはウエートトレーニング不足。体幹さえ強化できれば左肩の早い開きがなく、柔らかいヒジ使い、鋭い腕の振りを備えているので、あっという間に145キロの壁は突破できると思う。こういう未完の大器をモノにしてこそプロだと思うが、三宅のピッチングはスカウト氏の心の琴線に触れただろうか。

 第3試合は好素材が続出して楽しめた。まず名前だけ紹介しよう。

本間裕之(全足利・投手・右右・23歳・187-85)

吉原啓太(全足利・捕手・右左・24歳・175-75)

阿南洋平(新日鉄大分ク・投手・左左・25歳・177-65)

大村和也(新日鉄大分ク・捕手・右右・23歳・176-76)

井餘田基紀(新日鉄大分ク・右翼手・右左・21歳・177-70)

 席の真後ろにベテランスカウト氏がいたので話を聞くと、目当ては本間だという。

 「隠し玉だったんだけど、2球団いるんでびっくりしちゃった」

 「本チャンで指名するんですか」

 「プロの夢を叶えてやりたいしね」

 そんな話をした。ちなみに翌16日には巨人とともに日本ハムのスカウトも姿を見せた。目当てはどうやら阿南らしい。ネット裏はこんなに熱いのに、一般の観客は無料にも関わらずパラパラ程度しかいない。平日開催なので仕方ないが、残念だ。

 ◇9月16日(木)西武ドーム

 第3試合から観戦した。外は小雨が降り、肌寒い。4日前の神宮球場はカンカン照りの暑さだったのに、急に秋めき、第4試合に入ると虫の声がドームの外からリンリンリンリン、リに濁点がつくような騒がしさで聞こえてきた。

 所沢グリーンベースボールクラブ(以下所沢ク)-エイデン戦は元プロの選手や、かつてドラフト候補として名前が挙がった選手が登場して目を引いた。

片山文男(日章学園→ヤクルト→所沢ク・投手・右右・26歳・180-84)

竹下啓史(名古屋商大→中日→エイデン・遊撃手・右右・27歳・177-73)

清水信寿(中京大→エイデン・投手・右右・23歳・176-76)

高須諒(愛工大名電→エイデン・投手・右右・20歳・182-92)

 高須は登板せず、清水は最速136キロしか出せずドラフト候補と言われた頃の面影がなかったが、年齢が若いので持ち直してくる可能性はある。

 片山はスピードが出にくい西武ドームで最速141キロを記録し、さすが甲子園を沸かせた逸材と感心した。タイブレーク(延長11回以降、1死満塁で試合をスタートさせる)は2点以上入るのが当たり前になっているが、片山は一塁手のまずい守りで11回に1点許しただけで、12回は無失点に抑え、味方に勝利を呼び込んだ。

 ブレーキ鋭い横変化のスライダーはプロに復帰しても通じるキレ味があり、準決勝の福井ミリオンドリームズ戦は6安打、1失点完投、決勝の大和高田クラブ戦はリリーフした1回1/3を無安打無四死球に封じ込め、優勝に大きく貢献した。

 第4試合に登板した小川哲矢(新日鉄ク・右右・23歳・175-77)はパンフレットに「最速147キロのストレートを軸にバッターをねじ伏せる」とあるが、スピードは139キロ止まり、さらに抜け球が目立ちまだまだ一本立ちには時間がかかると思った。

 ◇9月17日(金)神宮球場

 雨で順延していた国士大-亜大戦を見た。亜大の先発はもちろん東浜巨(2年・右右・181-73)で、結果はさすがと言ってもいい3安打完封。しかし、これを額面通りに受け取るわけにはいかない。

 とにかくツーシームがめちゃくちゃ多い。これが5回には抜けまくり、2死後に3連続四球を与えて満塁のピンチを招くありさま。左肩上がり、左肩回し(結果的に早い開きになる)、トップ時の左足の大きい浮き…。これらが抜け球の原因と思われるが、これらは大学に入ってから急に目立つようになった悪癖。結果が伴っているので周囲も本人も修正しようという気にならないと思うが、今のままでは相当マズイと思う。

 この東浜の1年後輩(沖縄尚学時代もバッテリーを組んでいた)嶺井博希(1年・右両・175-75)は高校時代から打つ形がいいと思っていた選手で、この日も良さに堪能できた。第3打席まで右、第4打席から左打席に入る変則(それまで右、左投手が出ているが右打席で打っていた)。右打席では始動が遅く、ボールを長く見られる相変わらずの形のよさで第3打席は左腕の坂寄晴一から2ランを打っている。そして第4打席、突如左打席に立った嶺井を見て驚いた。左打席に立ったからではない。ほとんどノー始動、ノーステップで打っていたからだ。まるでホームランをガンガン打っていた頃のマーク・マグワイア(カージナルス)である。結果は出なかったが(遊ゴロ、三振)、こういう高等技術に挑もうとする気持ちの張りが頼もしい。

 試合後、結婚するまで6年半暮らししていた阿佐ケ谷に行き、昔通ったスナックのママを誘い、さらに昔阿佐ケ谷で散々飲んだ友達2人を三田、江戸川橋から呼び寄せ終電ぎりぎりまで飲んだ。28年前は2人とも平社員だったのに、今は代表取締役社長に出世していて驚いた。こんなことがあるんだ。

 9月18日(土)自宅

 この日は仕事の締め切りがあったので、前から家に籠る日と決めていた。翌日の新聞を見ると、18日は伊志嶺翔大(東海大・外野手)が攻守にいいところを見せ、チームに勝利を呼び込んだとある。今年は伊志嶺の試合を10試合観戦し、昨年までとまったく異なる印象を持つようになった。

 昨年までは素質だけで打ち、今年はそれに技術が伴い、確実性が増した。それを取材のとき本人に言うと、「その通りです」という答えが返ってきた。よさに根拠があるのと、何で打っているのかわからない選手とでは、同じドラフト候補でも天と地ほどの差がある。少なくともこうして書いていて、行数に差が出る。この伊志嶺に「首都大学リーグで(東海大以外)一番いいと思う投手は誰ですか」と聞くと、「武蔵大の永井(剛)」と即答された。もちろん、近々見に行くつもりだ。

 ◇9月19日(日)千葉・八千代球場

 今日行くのは秋季千葉大会が行われている八千代市民球場。ここは総武線で西船橋まで行き、東葉高速鉄道に乗り換え八千代中央まで行き、駅から10分程度歩くと行ける。西千葉まで寝過ごしたのが祟り、球場にはほぼ45分遅れで着いた。重役出勤のようだが、一応理由がある。一昨日までは頑張って行くぞと意気込んでいた。それが意気消沈したのは、勝ち残ると思っていた千葉黎明が検見川に0-7で完敗したためだ。

 昨年の9月20日、同じ八千代球場で行われた東京学館戦で千葉黎明の1年生右腕・上田祥史を見て、ストレートの速さに注目した。2年になってどう成長したか楽しみにしていたが、夏の大会はベンチ入りを果たせず、秋は県大会初戦敗退。あ~あと思い、つい電車内で長寝をしてしまった。

 球場に着いて選手名簿を開くと、上田は何と二塁手(背番号4)で登録されていた。せめて背番号「10」か「11」なら納得できるのだが、「4」とは。なお、昨年見た上田の評価は◎の中黒。これは☆印に次ぐ評価の高さで、次の試合に出た大器・上沢直之(専大松戸・右右・187-86)を見ても評価は変わらなかった。

 第2試合の佐原-専大松戸戦にはその上沢が先発して、3失点完投勝利した。投球フォームはまったく問題なく、スケールの大きさも健在。球持ちのよさが素晴らしく、アウトローにストレートがびしびし決まり、見ていて気持ちがよかった。少し早いが、来年のドラフト1位候補と言ってもいいと思う。

※次回は9月28日掲載予定

ドラフト2010
小関順二(こせき・じゅんじ)
 1952年生まれ、神奈川県出身。日大芸術学部卒。会社勤めのかたわら「ドラフト会議倶楽部」を主宰。本番のドラフト会議直前に「模擬ドラフト会議」を開催し注目される。その後スポーツライターに転身。アマチュア野球を中心に年間200試合以上を生観戦。右手にペン、左手にストップウォッチを持って選手の動きに目を光らせる。著書に「プロ野球問題だらけの12球団」ほか多数。家族は夫人と1女。
矢島彩(やじま・あや)
 1984年生まれ、神奈川県出身。5歳くらいから野球に夢中になり、高校時代にアマチュア野球中心に本格観戦を開始。北海道から沖縄まで飛び回り、年間150試合を観る。大学卒業後フリーライターに。雑誌「アマチュア野球」(日刊スポーツ出版社)などに執筆中。好きな食べ物は広島風お好み焼きと焼き鳥(ただしお酒は飲めません)。趣味は水泳。
福田豊(ふくだ・ゆたか)
 1962年生まれ、静岡県出身。85年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球、連盟などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在は毎朝6時半出社で「ニッカンスポーツ・コム」の編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。「ふくださん」の名前でツイート中。

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