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2010年10月26日

小関順二のドラフト日記(最終回)

28日、いよいよ運命の日を迎える早大・斎藤佑樹投手

 ◇10月18日(月)新宿

 夕方、雑誌「FRIDAY」(講談社)の編集者と新宿で会う。ドラフト特集をするということで、1位候補の寸評を依頼されたのだ。

 斎藤の寸評は辛口になった。シーズンごとの成績を次に紹介する。

07年春 27・1回 4勝0敗、防御率1・65、奪三振29(9・55)

           与四死球9(2・96)

   秋 57・2回 4勝2敗、防御率0・78、奪三振52(8・12)

           与四死球10(1・56)

08年春 46・1回 3勝2敗、防御率1・75、奪三振36(6・99)

           与四死球15(2・91)

   秋 65回   7勝1敗、防御率0・83、奪三振54(7・48)

           与四死球16(2・22)

09年春 52回   4勝2敗、防御率2・25、奪三振60(10・38)

           与四死球15(2・60)

   秋 38回   3勝2敗、防御率3・08、奪三振34(8・05)

           与四死球17(4・03)

10年春 41回   2勝3敗、防御率1・54、奪三振29(6・37)

           与四死球10(2・20)

   秋 37回   4勝2敗、防御率3・16、奪三振25(6・08)

           与四死球15(3・65)

合計 364・1回 31勝14敗、防御率1・75、奪三振319(7・88)

           与四死球107(2・64)

 成績のピークは誰の目にも2年生の秋だったことがわかる。それ以降は投球パターンをしっかり覚えられた。最も象徴的なことは他校の打者が高めのボール球を振らなくなったことだ。四球率の急上昇が何よりもそれを物語っている。

 斎藤は同世代の大学生を代表する投手である。この前提だけは誰が何と言っても覆らない。これまで3連戦の初戦に登板しなかったのは下級生時代の9回だけ。あとの30回はすべてエースとして第1回戦に登板している。早慶戦の初戦も多分先発するだろう。4年間休みなしのタフネスぶり、責任感の強さは並ぶ者がない。しかし、それによって技術的な迷い、あるいは成績の低下を相殺することはできない。斎藤には技術的な迷いにしっかり向き合ってほしい。

 1人になって新宿3丁目の夜を歩いていると、酒場のテレビがクライマックスシリーズを放送していた。このときはソフトバンクが1-0でリードしていたが、しばらくして携帯のIモードで途中経過を見たら、ロッテが逆転していた。秋風が身にしみる季節になった。

 ◇10月19日(火)自宅

 90年以降、ドラフト候補を高校、大学、社会人、その他に分類し、1冊のノートにまとめている。その2011年版を準備している今、改めて思うのは来年以降の高校生に好選手が揃ったということ。1年生では、東北大会でホームランを連発した田村龍弘(光星学院・三塁手)、140キロ台後半を記録する大谷翔平(花巻東)、会田隆一郎(酒田南)の本格派右腕、さらに横浜の左右本格派、山内達也と柳裕也、星稜の本格派左腕・森山恵佑、大阪桐蔭の快速球右腕・藤浪晋太郎に夏の甲子園大会で一二三慎太からヒットを打っている萩原英之(九州学院・一塁手)と枚挙にいとまがない。彼らが順調に成長してメジャーに行く選手の穴をしっかり埋めていく-。そういう流れがあって日本の野球は停滞せず、発展していくことができるのだと思った。

 ◇10月20日(水)大阪

 CS局、スカイ・Aに13時入りし、「ドラフト2010 ドラフト直前スペシャル」の収録に臨んだ。今回のテーマはドラフト直前なだけに、有力選手を絞り込んでの紹介。さらにプロ野球12球団の補強ポイントと、どの球団が誰を指名したらいいのかを元阪神投手で番組ディレクターの福家雅明さん、10月28日に行われるドラフト会議中継の司会・進行役、ABC朝日放送の枝松順一さんの3人で検証した。

 ドラフト1位候補は斎藤佑樹、大石達也、福井優也(以上早大)、沢村拓一(中大)、塩見貴洋(八戸大)、加賀美希昇(法大)、大野雄大(佛教大)、榎田大樹(東京ガス)、一二三慎太(東海大相模)の安定勢力9人に、中村恭平(富士大)、南昌輝(立正大)、岩見優輝(大阪ガス)、榎下陽大(九州産大)、宮国椋丞(糸満)+野手の伊志嶺翔大(東海大・外野手)、吉川大幾(PL学園・遊撃手)、山田哲人(履正社・遊撃手)、後藤駿太(前橋商・外野手)、山下斐紹(習志野・捕手)、さらに小林敦(七十七銀行)あたりの名前が最近、よく出てくる。彼らをまんべんなく紹介できたか心もとない。

 ◇10月21日(木)名古屋

 翌日、中京テレビの収録があるので名古屋に前泊。CS(クライマックスシリーズ)の真っ最中なので街中は野球一色かと思ったが、意外と静かである。それにしても巨人打線は打てない。否、中日投手陣が質・量とも巨人打線を上回っていると言ったほうがいい。この日も吉見一起が7回1/3、それ以降を高橋聡文、浅尾拓也の3人がシャットアウトした。巨人では腰の状態が悪く、第1戦から欠場しているが坂本勇人の不在があまりにも痛い。長打力を備えた攻撃的チャンスメーカーがいかに大きな存在であったか、監督・コーチは改めて思い知ったのではないか。

 気が早いが、日本シリーズの中日-ロッテは1974年(昭和49)以来、36年ぶりの顔合わせになる。落合博満監督にとっては86年まで選手として在籍した古巣との対戦で、クールな落合が熱くなるシーンがあるのか興味が尽きない。

 ◇10月22日(金)名古屋

 「スポーツスタジアム 法元ドラフト2010」の収録のため、13時前に名古屋市内のホテルに入った。元中日の法元英明さんが選ぶ15人の選手を紹介する番組で、関東を中心に見てきた人間には、この選手が指名されるのかと驚かされることが多い。

 法元さんは現役時代、中日の代打の切り札として活躍し、現役引退後は中日スカウト、2軍監督などを歴任し、現在はテレビ、雑誌、新聞などで少年野球を含むアマチュア球児を精力的に取材している。会うたびにその人柄に魅かれ、この日も収録後、かつての鳴海球場跡にお付き合いいただき、富山行き特急電車の発車までお酒もご一緒していただいた。

 「法元ドラフト」は地域柄、愛知を中心とした東海地方の視聴者を意識した人選をしなければならないので、関東者には時々なじみの薄い選手が登場する。たとえば宇田川雄一郎(三菱自動車岡崎・投手)、関啓扶(菰野・投手)、高木勇人(三菱重工名古屋・投手)、谷口雄也(愛工大名電・外野手)、森越祐人(名城大・遊撃手)たちだ。収録中、モニター画面で候補選手のピッチング、バッティングが見ると、確かにいいなと思う。

 左腕の宇田川は投げるとき右肩が上がる岡島秀樹(レッドソックス)のような投球フォームで、ボールの角度に特徴がある。関は斜めから落ち込んでくるスライダーに一級のキレがあり、ストレートも速い。谷口は広角に打てる柔らかさがあり、高木はストレートの力強さ、森越は堅実さより野性的な守りに特徴があり、いずれも一芸名人の素材である。

 収録後、法元さんと鳴海球場跡の名鉄自動車学校に行った。応対してくれた名鉄学園・常務理事の加藤幸夫さんは大のドラゴンズファン、野球好きで、法元さんの来訪にまさに狂喜していた。それについてはまたいずれ、どこかに書くつもりだ。

 ◇10月23日(土)県富山球場

 前日、法元さんと別れてから20時すぎの特急に乗り、3時間半かけて富山入り。1泊してこの日に臨んだ。北信越大会初日は3球場の中から県営富山球場で行われる試合を選んだ。球場に入り、席を物色していると、スポーツライターの西尾典文さんに声をかけられた。西尾さんとは本当にいろいろな球場でよく会う。03年の6月に東北大会を見に行ったときは、夜行バスを降りた朝6時半頃、盛岡駅で顔を合わせた。同時刻に着いた別の夜行バスに乗っていたのだ。どこそこへ一緒に行こうとは一度も示し合わせたことがないので、野球の相性がいいのだろう。

 さて、第1試合に出場する金沢のエースは“最速152キロ”と紹介される釜田佳直(右右・177-75)。勝てば翌日、強豪・敦賀気比との対戦が予想されるので、この日は登板しないだろうと思ったら本当に登板しなかった。試合は金沢が序盤から得点を重ね、9-0で7回コールド勝ちした。第2試合は4人の1年生がスタメンに並ぶ若い遊学館が東京都市大塩尻を圧倒し、12-0で5回コールド勝ちした。

 目を引いた遊学館の4人、1番遊撃手の谷口一平(1年・右左・171-65)、4番右翼手の山中将誉(2年・右左・178-75)、5番捕手の小林恵大(1年・右左・171-77)、7番三塁手の長田祐哉(1年・右左・173-73)は、旧チームの春の北信越大会でも見ている。一塁を守っていた小林はフルスイングのバッティングとともにショートバウンド捕球のうまさにも注目し、長田は代打で中前打を打った1打席だけで非凡な選手だと感心し、谷口は走攻守が高いレベルで3拍子揃い、4人の中では最も高く評価した。

 残る山中は力強さこそ目をみはったが、強引すぎるバッティングに唯一首をかしげた。一言で言うと、バッティングが最初から最後まで忙しい。そして、その姿は現在もあまり変わっていないのだが、トップを作るまでの前半の動きをゆっくりできるようになり、このゆっくりできる前半が気持ちに余裕を生んでいるのか、春とは印象が一変している。

 第3打席までにホームラン、三塁打、ヒットを打って、あと二塁打を打てばサイクル安打だったが、5回コールドで試合が終わり、記録はならなかった。投げては最速143キロと紹介されているので、野球センスに溢れているのだろう。一度マウンド上の姿を見たいと思っている。

 ◇10月24日(日)魚津桃山球場

 行きに乗ったタクシーは女性ドライバーで、県内に160人ほどいるという。全国で一番(女性ドライバーが)多いんじゃないですか、と言う彼女の話題は、途中から県内に出没する熊に変わった。山にどんぐりなど木の実がなくなり、人里や町中にえさを求めて下りてくる熊。このへんにも多いはずだから、繁みとかには注意してくださいと言われた。

 第1試合、金沢対敦賀気比戦では金沢のエース釜田に注目した。ブルペンで投げているのを見たときから、クセが強い投げ方をするなと思った。試合が始まってもこの印象は変わらず、まず腕の振りはスリークォーター。左肩の開きが早く、右投手の内角を狙うと抜け球になって死球の恐れがあるので、外角一辺倒のピッチングを強いられている。ストレートは“最速152キロ”のふれこみ通り速く、偵察隊に聞くと最速は151キロで、この試合では今のところ(4回終了時)146キロが最速だと教えてくれた。

 速いことは速いが高めに抜けて甘くなるので打者はミートすることを苦にしない。9回投げて奪三振はわずか3個。また、打たれた13安打のうち、2人の右打者に6本打たれているので、「内角を突けない=踏み込みが容易」という攻略の見取り図が出来上がる。春までのひと冬をどう過ごすかで釜田の野球人生は大きく変わる。

 第2試合の日本文理-松商学園戦では松商学園の1年生エース、熊谷優(右左・172-70)に魅了された。熊が出没するから熊谷の話をしていると思われたら心外である。本当にいいのだ。あと1年半で身長が5センチ伸びれば、間違いなく上位指名候補である。釜田と逆にとにかく左肩が開かない。「開かない投手」とはこういう投手を言うんですよ、と見本にしたくなるくらい開かない。

 ストレートの球速は135、6キロが最速だろうか。しかし、リリースでボールを潰せるので、低めのストレートにひと伸びある。さらに右打者の内角いっぱいに渾身のストレートを投げ込める。この「内角ストレート→外角に大きく逃げるスライダー」のコンビネーションは、無敵と言ってもいい。ちなみに、投げ始めから、投げたボールが捕手のミットに届くまでのタイムは2・2~2・5秒台。打者の動きをじっくり見ながら、投げるタイミングを変えられる見事なフォームと言っていい。

 帰りのタクシーのドライバーは男性で、熊の話を振るとすぐ乗ってきて、熊が川を下って海に行き、塩分を口にすることでミネラル補給をしていると話してくれた。タクシードライバーはいろんな客の話題に付き合わなければいけないので大変だと思った。(終わり)

※小関順二さんは28日、CS局スカイ・Aで午後4時30分から生中継されるドラフト会議のコメンテーターとして出演します。

ドラフト2010
小関順二(こせき・じゅんじ)
 1952年生まれ、神奈川県出身。日大芸術学部卒。会社勤めのかたわら「ドラフト会議倶楽部」を主宰。本番のドラフト会議直前に「模擬ドラフト会議」を開催し注目される。その後スポーツライターに転身。アマチュア野球を中心に年間200試合以上を生観戦。右手にペン、左手にストップウォッチを持って選手の動きに目を光らせる。著書に「プロ野球問題だらけの12球団」ほか多数。家族は夫人と1女。
矢島彩(やじま・あや)
 1984年生まれ、神奈川県出身。5歳くらいから野球に夢中になり、高校時代にアマチュア野球中心に本格観戦を開始。北海道から沖縄まで飛び回り、年間150試合を観る。大学卒業後フリーライターに。雑誌「アマチュア野球」(日刊スポーツ出版社)などに執筆中。好きな食べ物は広島風お好み焼きと焼き鳥(ただしお酒は飲めません)。趣味は水泳。
福田豊(ふくだ・ゆたか)
 1962年生まれ、静岡県出身。85年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球、連盟などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在は毎朝6時半出社で「ニッカンスポーツ・コム」の編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。「ふくださん」の名前でツイート中。

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