阪神の今秋ドラフト1位候補の本命に、早大・斎藤佑樹投手(4年=早実)が急浮上していることが5月20日、分かった。今年のドラフト戦略は、将来のエースになる本格派投手を指名する方針で固まっている。同じ早大の大石達也(4年=福岡大大濠)、中大の沢村拓一(4年=佐野日大)ら逸材右腕も1位候補に名前が挙がっているが、実績十分の斎藤を推す声も多い。甲子園との相性も抜群。「ハンカチ王子」で人気が沸騰した06年夏以来、聖地を主戦場とする可能性が高まってきた。

 佑ちゃんが甲子園に帰ってくる!?

 阪神の今秋ドラフトの1位に、早大・斎藤の名前が本命候補として急浮上している。「試合をしっかりと組み立てられる能力はやはり魅力的だ。最終学年になって、球自体も良くなってきた。球団内でも評価は上がっている」と球団関係者は言う。阪神では即戦力投手を指名する方針が決まっている。早大・大石や中大・沢村、仏教大の左腕大野ら逸材に密着マークしているが、ここにきて斎藤の名前がクローズアップされてきた。

 スマートな顔立ちから斎藤は「東京色」が強いが、本拠地の甲子園とは縁がある。06年夏に早実のエースとして全国優勝を果たし、「ハンカチ王子」の愛称でフィーバーを起こした。09年11月のオール早慶戦が53年ぶりに同球場で行われ、最終回に登板。本調子ではなかったが、3者連続三振を奪った。「とても投げやすい。神宮とかいろいろな球場で投げさせてもらっているけど、結果的に一番いいマウンドなんだと思う」と試合後には聖地の感触を懐かしんだ。

 こうしたスター性と大エースになる資質を備えた右腕に対し、獲得の声が上がるのも無理はない。06年秋には当時の宮崎オーナーが「4年後を注目したい」と大卒時の指名に意欲を見せていた。その思いが再燃。本社首脳は「人気球団だけに、新戦力がプレッシャーに負けて、伸びないことが多い。条件として実績は必要だ」と言う。5万人近い大観衆、マスコミの目も厳しい。東京6大学で通算27勝を誇る斎藤ならば、そんな環境でも力を発揮できると見ている。もちろん、営業面でも十二分に期待できる素材だ。

 斎藤に関しては、ロッテとヤクルトの1位指名が確実視されている。他球団でも1位候補にリストアップされており、複数球団が競合するのは必至。阪神では斎藤を含めた本格派投手の逸材を秋まで追いかけ、1位指名決定まで慎重に議論を進めていく姿勢だ。今年のアマ球界は例年にはない「豊作イヤー」と言われる。阪神や斎藤の今後の動向から目が離せない。

 ◆阪神のドラフト戦略

 今季のチームはエース不在の状況から、本格派投手を上位指名する方針だ。実績ナンバーワンの早大・斎藤や直球の最速が157キロを計測した中大・沢村、潜在能力がトップクラスの早大・大石、立正大の南、左腕では佛教大の大野らが1位候補に挙がる。高校生の逸材もチェックしており、PL学園の吉川大幾内野手(3年)、東海大相模の一二三(ひふみ)慎太投手(同)らを上位候補としてリストアップしている。