<プロ野球ドラフト会議>◇27日

 “持ってる男”の第2弾だ。日本ハムから5位でサプライズ指名を受けたJR東日本東北・森内壽春投手(26=青森大)は、ドラフト会場とつないだ控室のパソコンに自分の名前が浮かび上がると「まさかです。順位は関係ないと思ったし、素直にうれしいです」と目を丸くした。

 24日の都市対抗(対三菱重工横浜戦)で、大会史上54年ぶりの完全試合を達成。その時点でプロ側からのアプローチはゼロだったが、快挙からドラフト当日までの3日間で急きょ、3球団が調査に動いた。日本ハムからの指名は、人生が変わった瞬間だった。

 東日本大震災の際は、広島・呉市でキャンプをしていたが、なかなか本拠の仙台市にたどり着くことができず。運輸車両部に所属する森内は、チーム全員で復興にかかって「2カ月間ボールを握れなかった」。練習が再開すると「苦しかったけど、仕事が終わってからの野球が楽しくてしょうがなく、野球ができる喜びを知った」と振り返る。

 自らの力で奇跡をたぐり寄せ、シンデレラストーリーを描いてみせた。「自分はこれで夢をかなえたというのがある。震災に見舞われた人が、もう1度、失った夢と希望をもってくれたら」。これからは、北の大地でバラ色の野球人生を切り開く。【寺尾博和】