<プロ野球ドラフト会議>◇24日

 カズミさん超えでタカの救世主になる!

 JR九州・加治屋蓮投手(21=宮崎・福島)がソフトバンクから1位指名を受けた。宮崎県出身で幼少期からの鷹ファン。最優秀投手に3度、沢村賞に2度輝き、今季途中に現役退団した斉藤和巳氏(35)を理想像とし、先発難にあえぐチームにエネルギーを注入する。

 加治屋は笑顔のまま、大きな目を何度もパチクリさせた。憧れのソフトバンクから、まさかの1位指名。初々しく、それでいてあまりに力強く誓った。

 加治屋

 小さいころから斉藤和巳さんに憧れていました。一緒にプレーできないのは寂しいですけど、それ以上の選手になれるように頑張っていきたい。

 28日開幕の日本選手権に備え、大阪市内のホテルで仲間と時間を共にしていた。ドラフト指名を携帯電話でチェックしていたチームメートから「おめでとう!」と声をかけられ、1位指名を知った。「最初は信じられなかった。そんなに高い評価をいただけるとは…」。地元球団からの指名に、感極まった。

 宮崎出身。ソフトバンクの前身、ダイエーとの出会いは小学4年時。父、弟と3人で現ヤフオクドームの近鉄戦に向かい、人生で初めてプロ野球を生観戦。斉藤和巳と城島がバッテリーを組み、チームは延長10回裏にサヨナラ勝ち。「自分もここで野球をしたいと思った」と振り返る。

 宮崎・福島高3年夏は県大会2回戦敗退。高校卒業後、JR九州に入社した。時には沢村賞投手・斉藤和巳の投球映像を動画サイトで目に焼き付け、投げっぷりを見習う日々。入社2年目には球速150キロ超えを果たし、順風満帆に思えた道のり。突然、落とし穴が待っていた。

 昨年1月、左足すねを疲労骨折。痛みに苦しみ、走り込みから7カ月間も遠ざかった。試合映像をチェックし、データを取って配球を勉強し、ひたすら体幹トレーニングにいそしむしかない。JR九州の吉田監督が「走るのを忘れたような状態。本当に足をつけられないような状態だった」と振り返った時期さえも、力に変える強さがあった。

 加治屋

 しっかり体幹を鍛えたらボールのキレ、制球力が上がったんです。心が折れそうになった時、仲間の姿を見て、また一緒に野球したいと思った。辛抱を学びました。

 183センチから最速152キロの速球、高速フォークを繰り出す姿は、斉藤和巳をほうふつさせる。チームは今季、摂津以外にローテを守れず、リーグ最多の18投手が先発。ルーキー右腕は1年目からローテ入りが期待される。「今は来年のことは考えず、今月末にある日本選手権で持っている実力を出したい。斉藤さんの1球1球ほえたりするスタイルに魅了された。打たれたらどうしようとか考えず、真っ向勝負していきたい」。どこまでも真っすぐな姿勢で、弱肉強食の世界に飛び込む。【佐井陽介】<加治屋蓮(かじや・れん)アラカルト>

 ◆生まれ

 1991年(平3)11月25日、宮崎・串間市。

 ◆無名

 小学3年から野球を始め、中学時代は三塁手。宮崎・福島高で本格的に投手を始めた。1年夏にチームは県ベスト16を記録も「自分が貢献できたのは2年秋から」。1年秋は背番号18。2年秋からエース。2年夏、3年夏は県2回戦で敗退。

 ◆剛腕

 10年4月にJR九州入社し、最速152キロを記録。昨秋の日本選手権では救援で5回無失点と好投。

 ◆勤務地

 10年4月にJR九州入社。現在はJR九州病院に勤務し、デスクワークをこなす。

 ◆おっとり系!?

 血液型はB。JR九州の吉田監督は「もっと、うれしい時はうれしい、悔しい時は悔しいと、感情を出してほしい。野球選手なんだから」。

 ◆ライバル

 広島1位指名の九共大・大瀬良。「何回か対戦したことがある。すごい投手。投げあえられれば」。

 ◆家族

 会社員の父博樹さん(43)専門学生の弟伸さん(19)。母伊津子さんは高校2年時、心筋梗塞のため38歳で亡くなった。

 ◆肉体

 183センチ、80キロ。右投げ右打ち。