社会人で“浪人”を経験した苦労人が、プロでの飛躍を誓った。西武ドラフト5位のトヨタ自動車東日本・山口嵩之投手(24=石川工)が28日、岩手・金ケ崎町の同社岩手工場で指名あいさつを受けた。11年秋にトヨタ自動車(愛知)を“戦力外”になり退部。1年間のブランクを経てプロの扉を開いた152キロ右腕は「実績がないのに指名してくれた球団に感謝したい」。水沢スカウトは「実質まだ社会人1年目。ストレートに懸けてみたかった」と素質を高く評価している。

 挫折の連続だった。高校時代は11球団から注目されたが、右ヒジ痛でプロを断念。トヨタ自動車入社後は「練習についていくのがやっと」(山口)で2年目には腰も痛め、在籍4年で結果を残せなかった。退部後は1人で体を鍛え直し、今年1月に岩手へ。先発として都市対抗予選で好投し、スカウトの目に留まった。もうヒジや腰に不安はない。「今までの経験は、どれも自分に必要だった。早く1軍で投げたい」。全国の舞台に立ったことがない男が、プロのマウンドで輝きを放つ。【鹿野雄太】

 ◆山口嵩之(やまぐち・たかゆき)1989年(平元)7月29日、金沢市生まれ。兼六中では軟式野球部に所属。石川工では北陸NO・1右腕と評され、3年春に県4強。卒業後にトヨタ自動車入社も11年秋に退部。今年1月にトヨタ自動車東日本に途中入社。秋の日本選手権東北大会で創部2年目のチームを準優勝に導いた。右投げ右打ち。184センチ、86キロ。家族は両親と弟。血液型A。