おばあちゃんにうれし涙を…。広島ドラフト2位指名の亜大・九里亜蓮投手(4年)が1日、岡山市内の母校・岡山理大付まであいさつに出向き「勝てる投手」を理想像に掲げた。中学時代に道を踏み外した時、家族のサポートに助けられたという。弱肉強食の世界で結果を残し、恩返しを体現する。

 広島にドラフト指名された報告のため、訪れた母校は3年ぶりだった。懐かしい風景、匂いを感じ取り、端正なルックスが思わず緩む。九里は岡山理大付で過ごした3年間をしみじみと振り返った。

 九里

 全寮制の学校だったので、ご飯も洗濯も何もかも自分でやり始めて。そこで家族に感謝できるようになりましたね。野球もそうですけど、人間的に成長させてもらいました。

 米フロリダ州生まれ。米国人の父、日本人の母から生を受けた。米国から日本に戻った中学時代、道を踏み外しかけたという。「練習もせず、夜通し遊んだ時期もありました」。中学2年時の半年間は何度も練習をサボった。自暴自棄になりかけた時、祖母淳子さんに目を覚まされた。

 九里

 おばあちゃんと、悪い道とやりたい夢とどっちが大きいのか、という話をして…。しっかり野球をやりたいと思えたんです。

 離れ離れで暮らしていた父マーク・アントニオ・シェックさんは米国から日本まで駆けつけ「顔がパンダみたいになるぐらい」愛のムチを振るってくれた。家族に助けられ、志願して「野球に集中できる」全寮制の岡山理大付に進学。感謝してもしきれない。

 九里

 ドラフトの後、おばあちゃんに「良かったね」と連絡したら、カツを入れられました。「これからの行動を見られる。これからが勝負だから」と。父からは先日留守電が入っていて、泣いていました。一番喜んでくれていると思う。

 父はかつてブレーブス傘下の3Aチームで遊撃手だった。「小さい頃、ビデオ映像も見ました。ショートなのに9回はマウンドに上がって、球速153キロを出してました。(最速148キロの)僕はまだ5キロ足りない」と苦笑い。少し遠回りしたが、サラブレッドの血を引いている逸材だ。

 九里

 家族に楽をさせてあげたい。当たって砕けろじゃないけど、どんどん打者に向かっていければ。勝てる投手を求めています。

 1年目からの先発ローテ入りへ「そういう気持ちは強いです」ときっぱり。恩返ししたい-。九里には強いエネルギー源がある。【佐井陽介】<九里亜蓮(くり・あれん)アラカルト>

 ◆生まれ

 1991年(平3)9月1日、米フロリダ州。20歳を機に日本国籍を取得。

 ◆野球の血

 父マーク・アントニオ・シェックさん(48)、母早登江さん(51)。父はブレーブス傘下3Aチームでも活躍。

 ◆球歴

 幼少期に海外を転々とし、小3で米国の硬式野球チームに所属し内野手。日本に移り住んだ後、鳥取・米子市の東山中時代は米子ビクターズで投手。岡山理大付では2年春からベンチ入りし、3年春から背番号1。3年夏は岡山大会3回戦敗退。

 ◆MVP男

 亜大では2年春にデビュー。4年春から東都リーグ戦11連勝、先発試合では8戦連続完投。4年秋は史上3校目のリーグ5連覇をけん引し、2季連続MVP。11月16日開幕の明治神宮大会では06年以来の大学日本一を目指す。

 ◆先生

 11月下旬から約2週間、母校・岡山理大付で教育実習する予定。科目は公民

 ◆ゲン担ぎ

 試合前は米国人ラッパー「ピットブル」を聞き、気持ちを高める。

 ◆肉体派

 身長187センチ、体重90キロ。右投げ右打ち。