エース左腕のエキスをたっぷり吸収して、ドクターK襲名や。阪神からドラフト1位指名された横浜商大・岩貞祐太投手(22=必由館)が10日、横浜市内のホテルで、契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円(推定)で仮契約を結んだ。奪三振王への決意をみせたサウスポーは、能見にそっくりな「小能見」。和田監督も来春キャンプでエース能見に岩貞を密着させる英才教育プランを披露した。

 「能見2世」から「能見超え」へ。岩貞が決意を胸に、虎の一員となる。仮契約を結び、緊張した面持ちで会見場に現れた。「阪神の一員としてやっていこうという実感が湧いてきました」。北村照文スカウトから阪神の帽子をかぶせてもらうと、笑みがこぼれた。

 岩貞は大学4年間、神奈川大学リーグで327奪三振。1年春から三振の山を築いてきた。今秋同リーグでの奪三振数は2位に34個差をつけて断トツ78(8試合)。「三振を多く取ることに魅力を感じる。プロで通用するか分からないけど、三振を取る球を磨いていきたい」と、三振への強いこだわりをみせた。

 阪神の左腕でドクターKと言えば…。そう、12年能見篤史投手(34)が172個で最多奪三振のタイトルに輝いている。しなやかなフォームから鋭い球を投げ込むスタイルは、能見そっくり。リリースする姿もうり二つだが、それもそのはず。岩貞は能見の投球フォームを手本にしてきたからだ。

 そんな岩貞にスペシャル育成案が温められている。安芸での秋季キャンプに臨む和田監督がこの日、英才教育プランを提案した。「(1軍の沖縄キャンプに)連れて行くとなった時点で考えるけど、やはり近くに良い手本がいれば、教わる部分と、目で盗む部分とあるだろうから」。すでに来春キャンプの1軍スタートは濃厚。さらに、阪神の春季キャンプではブルペン入りする投手陣と、それ以外の投手陣の主に2組に分けて調整を進めるが、能見と常に同組での練習プランが検討されているのだ。キャッチボール相手になれば、ウオームアップから学ぶこともでき、バント練習で一緒であればフィールディングに磨きがかかる。エース左腕の一挙手一投足をそばで学ぶのは、技術的にもちろん、調整法や心構えも吸収できるチャンスだ。

 大きな武器を手にするかもしれない。現在、打者を三振に仕留める新たな武器として、能見も持つフォークの練習をしている。岩貞の落ちる球はチェンジアップだけだったが、能見をマンマークできるとなれば、これ以上の環境はない。

 しかし、目指すのは追いつくためではない。追い越すためだ。「将来的には(能見さんを)超えたと言ってもらいたい」。今は「小能見」かもしれない。だが、虎のドラ1左腕は、ビッグプランに後押しされ、エース超えへの道を歩んでいく。【宮崎えり子】