ソフトバンクがドラフト１位指名を盛岡大付・松本裕樹投手（３年）で一本化していることが２２日、分かった。都内でドラフト会議に向けた編成スカウト会議を開催。当初は早大・有原らが基本線だったが、王球団会長は「競合しないことを祈ります」と一本釣りへの方針転換を示唆。最終決定は当日ながら、パ王者の戦略にがぜん注目が集まってきた。

　リーグ制覇、日本シリーズ進出を決めた鷹軍団のドラフト戦略が風雲急を告げてきた。ドラフト前日の会議を終えた王会長の言葉が鍵だった。「競合しないことを祈ります」。これまで早大・有原、済美・安楽、前橋育英・高橋らを１位候補に挙げたが、各球団が１位指名を公表し始め、想定された競合が度合いを強めている。この最終局面にきて、球団は一本釣りへシフト転換を図ったもようだ。

　その本命が松本だ。身長１８３センチで最速１５０キロを誇る右腕。今夏の岩手県大会の決勝で右肘を痛め、甲子園では本調子を欠いたが、初速と終速の差が少なく、制球力ある投球が持ち味。夏以降は右肘の回復に努め、プロ志望届を最終期限の９日に滑り込みで提出していた。投手としてはもちろん、高校通算５４本塁打と打力もあり、日本ハム大谷と同じ「二刀流」で注目された。松本本人はプロで投手に絞る考えを持っているが、交流戦で打撃を披露する機会が訪れるかもしれない。ファンにとっても魅力的な素材だ。

　王会長は「各チームがチームの状態に応じていろいろ考えているだろう。重なるものもあれば、重ならないものもある」とドラフト戦略の全体像を語った。例年に比べて、大学・社会人に即戦力の候補が少なく、ＦＡや助っ人補強で戦力が充実しているソフトバンクのチーム事情もあり、他球団との競合を回避し、素質の高い高校生の獲得に軸足を置いたとみられる。

　ただ例年通り最終決定はあくまでも当日。王会長は「今の段階である程度結論は出ている」と一本化を認めながら「明日になったらガラッと変わるかもしれない」と続けた。ドラフト会議には、日本シリーズを最後に退任する秋山監督は出席しない。仮に競合となった場合、王会長がくじを引く予定。他球団の動き次第で軌道修正する可能性も残しつつ、まずは松本に絞った。【押谷謙爾】

　◆松本裕樹（まつもと・ゆうき）１９９６年（平８）４月１４日、横浜市生まれ。南瀬谷小１年の時、南瀬谷ライオンズで軟式野球を始める。南瀬谷中では瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では１年春からベンチ入り。１２年夏甲子園もメンバー入り。１３年春センバツでは安田学園戦に先発。１４年夏甲子園では東海大相模戦で９回８安打３失点完投。敦賀気比戦で２回２／３を１０安打９失点。最速１５０キロ、球種はスライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム。高校通算５４本塁打。１８３センチ、８０キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。