オホーツクから神宮の杜(もり)へ殴り込みだ。ヤクルトのドラフト2位、東農大北海道・風張蓮投手(21)が3日、都内の東農大で指名あいさつを受けた。持ち味は最速151キロの直球。オフのアルバイトで、1箱約20キロのサケとホタテの積み降ろし作業で腕っぷしを鍛え上げた。背番号も「32」に決まり、14日から始まる明治神宮大会での全国制覇を置き土産にプロの世界に飛び込む。また真中満新監督(43)はこの日、松山秋季キャンプ初日にブルペン入りした投手全員に100球以上の投げ込みを指令。ハードなメニューを課した。

 アピールポイントを聞かれた風張は、迷うことなく言いきった。「サケの積み降ろしで鍛えた腕っぷしです。真っすぐで気持ちを出していくのが持ち味です」。キャンパスはオホーツク海に面した網走市。生まれ育った岩手・伊保内から、大学は東京でなく、さらに北の大地へ向かった。「野球をやるならどこでも一緒」というのが信念だった。

 積雪量は故郷と変わらないが、寒さが違った。そこで忍耐力を培ったのがアルバイトだった。樋越勉監督(57)は「網走は農業と水産の第1次産業の町。そこで社会勉強をするのが、うちの教えです」と背景を話した。

 夏は農業の大根掘りも行うが、過酷だったのは1年から毎年、オフの冬季に1カ月行ったサケとホタテの積み降ろしだった。風張は「重たいです。それを3、4時間やるので結構きついです」と苦笑交じりに話した。オホーツクらしい「地の利」のおかげで、パワーを養うことができた。

 1年春に神宮で全国デビュー。しかし慶大を相手に「途中から投げて1死か2死しか取れなかった」と内容は散々だった。これが神宮との出合いであり、成長の原点。「自分のレベルを知った。レベルアップしたい」と目標ができた。

 2、3年時には代表候補に選ばれた。3年時の相部屋は早大・有原と中村、明大・山崎、亜大・山崎、法大・石田。全員、今年のドラフトで2位までに指名されたメンバーによる「プロ部屋」で、大いに刺激を受けた。さらに今夏は釧路で行った亜大とのオープン戦で山崎に投げ勝ち自信もついた。

 岩手・伊保内から北海道網走を経て、いよいよ都で勝負に出る。「まずは初の全国制覇です。プロでは、やはり先発で勝てる投手になりたい」。極寒に耐えた男が、最下位ヤクルトを熱くする。【矢後洋一】

 ◆風張蓮(かざはり・れん)1993年(平5)2月26日、岩手県九戸村生まれ。伊保内2年時には、秋の県大会1回戦の花巻南戦で17三振を奪って注目を集めた。甲子園出場経験なし。遠投120メートル。趣味はNBA観賞。家族は両親、兄、弟、祖母。185センチ、86キロ。右投げ右打ち。