新人王有力候補の巨人山口鉄也投手(25)が19日、東京・大手町の球団事務所で契約更改し、3100万円増の4500万円(推定)でサインした。育成選手だった2年前の年俸は240万円。そこからわずかな期間で年俸は18・75倍に膨れ上がった。「すごく評価していただいた。自分が思っているより多かったです」と白い歯をのぞかせた。

 今はチームメートの加藤のお下がりのキャデラックに乗っているが、自分へのごほうびとしてベンツのゲレンデの購入も考えている。昨年は10万円に満たないスーツが一番高い買い物だったが「それよりも高いものは買いたい」と冗談まじりに笑わせた。

 今季は67試合に登板し11勝を挙げた。左の中継ぎとして13ゲーム差を逆転してのリーグ優勝に大きく貢献した。育成出身の選手としては出世頭になる。他の育成枠選手にも希望を与える存在であることには「僕は運もあったけど、そういうところからでも1軍で投げられた。チャンスはあるんで…」。頑張ってほしいという言葉は飲み込んで、エールを送った。

 来季に向けては制球を磨くつもり。「今季はど真ん中目掛けて思い切り腕を振った。思い切り腕を振ってもコントロールがつけられるようにしたい」と進化を目指す。「来季はロングリリーフをやりたい。最低でも50試合は投げたい」と、さらなる疲れ知らずの体に鍛え直していく考えだ。

 このオフ、寮を出て一人暮らしを開始する。自立することで、自己管理能力が問われる年にもなる。「1年だけかって思われないように続けて頑張っていきたい」と気持ちの緩みはない。年俸はスターに近づいても、育成からはい上がった精神は失わずに戦っていく。【竹内智信】