やはり、そう来ますか。杉山直久投手(27)は、球団からのシビアな通告に黙ってうなずくしかなかった。契約更改の席で減俸に加え、プロ入り以来背負っていた誇りの番号「18」を変更することを命じられた。

 「サインはしました。ダウンです。仕方がない。背番号も『変わる』と言われた。三浦さんには関係なく、自分が6年間でちゃんと1軍にいられたのが1年間だけ。仕方がないと昨年くらいから思っていた」

 星野監督(現SD)になって初の02年度ドラフト自由枠で阪神に入団した。地元関西出身の即戦力右腕に与えられたのが「18」。過去に藪、野田、池田ら、時の中心投手がつけていたエースナンバーに、期待の高さが詰まっていた。

 05年には先発ローテーションに収まり、9勝を挙げて優勝に貢献した。だがその後は2年間でシーズン4勝止まり。今季はわずかに2勝とまったくの不振で、厳しい冬の訪れに震えていた。

 折しも球団はFAで横浜三浦の獲得に乗り出した。仮に杉山がコンスタントな活躍をしていても、三浦が移籍すれば背番号「18」を守れるかどうかは微妙だった。そんなチーム事情以前に、杉山自身がふがいなさからはく奪を覚悟。三浦の去就が正式に決まる前に、まず「18」を手放すことを受け入れた。

 「入団した時の番号ですから、悔しい気持ちはある。背番号が変わって心機一転活躍する選手も多いので頑張りたい」

 30日の三浦の正式表明をじっと待つ沼沢球団本部長は、杉山の背番号変更を「三浦を意識しないと言えばウソになるが、杉山本人の成績がメーン。奮起を促す意味合いが大きい」と話した。三浦獲得の正否にかかわらず、かつての9勝右腕に発奮してもらうのが狙い。新番号は新入団選手など他の選手との兼ね合いで決める。

 真弓新監督は来季構想で「先発陣の充実」を掲げる。三浦など補強に頼るだけでなく、久保田が中継ぎから転向するなど配置転換や若手の成長を期待する考えだ。「久保田も先発にくるし、競い合って勝たないといけない」。久保田と同学年の杉山は、新番号で生まれ変わることを誓った。【町田達彦】