ついに育成出身者から1億円プレーヤーが誕生した。巨人山口鉄也投手(26)が2日、東京・大手町の球団事務所で契約更改交渉を行い、5500万円増の1億円でサインした。1年目の年俸(240万円)の40倍以上の給料を手にすることになった左腕は、育成ドラフトを経て入団した選手では初めて到達した大台を通過点に、さらなる飛躍を誓った。

 1の後ろにゼロが8つ並んだ契約書を見て、これまでの険しい道のりがフラッシュバックしたのかもしれない。会見場に現れた山口は、しみじみと1億円プレーヤーになった喜びを口にした。「信じられないです。(1億円以上を稼ぐのは)すごい選手ばかりというイメージがあった。自分でもよくここまで来られたなと思います」。05年の入団時240万円でスタートした年俸は約42倍に膨れ上がった。

 今季は1億円に値する働きだった。球団記録を更新する73試合に登板し、9勝1敗4セーブ、防御率1・27の好成績。打者の左右に関係なくゲーム終盤の勝負どころで起用され、クルーンが故障離脱した際には守護神の穴も埋めた。まさに大車輪の活躍で7年ぶりの日本一に貢献し「肩ひじの負担も考慮して起用してもらえたので、ケガすることなく投げられた。充実した1年でした」と笑顔で振り返った。

 エリート街道を進むドラフト上位の選手にはない、ハングリー精神で道を切り開いてきた。高校卒業後に4年間プレーした米ルーキーリーグの月給は10万円で、育成選手時代(月給20万円)の半分。野球を仕事にできる喜びを誰よりも知る山口は「来年の目標?

 数字とかはないです。1軍で投げられるのなら(役割は)なんでもいいです。大事な場面で山口を出したら抑えてくれる。そんな信頼される投手になりたい」と、今後もフル回転でチームに貢献することを誓った。

 新選手会長の内海から副会長にも指名され、5年目の来季は投手陣のリーダー的存在としても期待が掛かる。オフも休むつもりはなく、今月10日に出発するオーストラリアのV旅行でも、現地のジムを探してトレーニングを続けるつもりでいる。「大台は通過点。これに満足せず、どんどん上を目指していきたい」。育成の星は前だけを向いている。【広瀬雷太】