日本サヨナラ負け、米も認めた誤審

- 2006年3月14日付けの紙面イメージ
<WBC:日本3−4米国>◇2006年3月12日◇2次リーグ◇エンゼルスタジアム
【アナハイム(米カリフォルニア州)12日(日本時間13日)】王JAPANが審判の判定変更で「歴史的1勝」を逃した。国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の2次リーグ初戦で、日本は、優勝候補の米国と対戦。9回サヨナラ負けした。3−3の8回1死満塁、岩村の左飛で、三塁走者西岡がタッチアップし生還した。だが、マルティネス監督が離塁が早いと抗議し、判定が覆った。初回のイチローの先頭打者本塁打などで優位に試合を進めていただけに、後味の悪さが残った。米国内でも判定変更に批判的な報道が出ている。
「アナハイムの悲劇」が起きた。王監督は何度も首を振り、左手を回しながら球審の元へ向かった。約3分間。通訳を介し、時には自ら「ノー」と連発しながら、猛然と抗議した。「野球がスタートしたと言われる米国で、そういうこと(判定変更)があってはならない」。試合後の記者会見で、王監督は厳然とした口調で言い放った。
同点の8回だった。1死満塁。岩村が左飛を打ち上げ、三塁走者西岡がタッチアップした。日本が勝ち越した、と誰もが思った。米国は捕手が、三塁のカバーに入ったジーターに送球し、西岡の離塁が早かったことをアピール。確認を求められた二塁塁審は両手を広げた。
これに米マルティネス監督が抗議した。「判定を下すのは、球審のはずだ」。今大会では三塁走者の離塁は球審が判定する決まりになっている。球審は二塁塁審に事情を説明した上で、「アウト」に覆した。歴史に残る一戦は、思わぬ形で水を差された。
王監督 いくら抗議があったとはいえ、変えるということは日本で長年、野球をやっているが、見たことがない。一番近いところにいた審判がセーフと言っているのに、遠くにいた審判が変えるのはおかしい。世界中で見ているのに、アメリカのためにもならない。
野球は明治初期に、米国から日本に伝わったとされる。それから1世紀以上の時を経た。親善試合では日米で何度も戦ってきたが、国の威信をかけた真剣勝負はこの試合が初めてだ。「プロに入ったときから正力さん(松太郎氏=巨人初代オーナー)に『米国に追い付き、追い越せ』と言われていた。念願でもあったし、実現してうれしい」と王監督はこの舞台を待ちわびていた。日本は互角以上に戦った。昨季のナ・リーグ奪三振王、ピービから、イチローが先頭打者本塁打で先制点を奪った。2回には川崎の適時打で2点を追加した。守っては小刻みな継投で必死に防戦し、メジャー軍団を相手に1歩も譲らなかった。9回、A・ロドリゲスのサヨナラ安打に飛び込み、弾いた二塁手の西岡はグラウンドに倒れ、天を見上げて動かなかった。あと1歩で金星を逃した悔しさが、見えた。
ユニホームを脱いだ王監督は、穏やかな口調に戻った。「初めての真剣勝負でみんなよくやったよ。アメリカも野球発祥国のメンツがあるから必死だった。世界の人に日本の野球をアピールできたと思う。選手たちはいい財産を得たよ」。この1敗を思い出にするつもりはない。「メキシコ、韓国に勝って、もう1度、米国にチャレンジする」。米国とともに2次リーグを勝ち抜けば、18日の準決勝で再戦。新たな歴史を刻むチャンスはある。残り2試合、勝つしかない。【中村泰三】
球審を務めたボブ・デービッドソン審判員(53)は試合後「満塁でのタッチアップをチェックするのは球審。(二塁塁審の)ナイト審判員はいるべき場所である三塁付近にいたが、タッチアップをチェックする権限はない。それが最初に(問題なしとの)判定を下してしまった。球審の判定すべきところであり、私は離塁が早いと判断した」との声明文を出した。AP通信によると、デービッドソン審判員は99年の労使紛争でメジャーの審判員を辞職し、現在はマイナーリーグに所属している。
今大会は37人の審判が登録され、22人がアメリカ人。ほとんどがマイナー審判員。米国−日本戦は3人がアメリカ人で、1人がオーストラリア人だった。本来はメジャー審判が務める予定だったが、2月下旬になって大リーグ機構と大リーグ審判組合との話し合いが決裂した。報酬面で折り合わなかったとみられている。東京ドームで行われた1次リーグでは日本の審判も1人参加していたが、2次リーグ以降は参加しない。日本では大会前から、出場チームの1つである米国が審判員を決める方法について疑問の声が出ていた。
米メディアは判定について、さまざまな反応を見せた。ニューヨーク・タイムズ紙は「日本にとっては、カリフォルニア・スキーミング(陰謀)だ」と、青春映画「カリフォルニア・ドリーミング」に引っ掛けた見出しで「WBCのフィールドで初めて国際問題が起きた」と報じた。また同紙はAP通信の記事を電子版に掲載し「(サヨナラ打の)A・ロッドと疑わしい判定が米国を救った」との見出しをつけた。
USAトゥデー紙は試合展開よりも、事の経緯を詳しく紹介し「テレビのリプレーを見る限り、西岡の判定を変えたのは間違いである」と主張。ロサンゼルス・タイムズ紙は「米国は日本を倒すために、幸運だけでなく、審判の目も必要だった」と批判的だった。
ワシントン・ポスト紙は「三塁ベースから三塁側ベンチまでは、30フィート(約9メートル)もある」と、論争自体に冷ややかな態度を示した。
大リーグ公式ホームページのマイク・バウマン記者は「日本は勝つ価値があった」という見出しのコラムを掲載。「もし日本が準決勝に進出しなかったら、あの判定が要因の1つになる。それは恥ずかしいし、残念なことだ」と指摘した。
辻三塁ベースコーチ(西岡のタッチアップについて)球審が二塁塁審に判定を促していたのだから、覆ることはあり得ないはず。おかしい。浅い左飛だったが、左翼手(ウィン)の肩が弱いことは分かっていた。いちかばちかのスタートではなく、十分に間に合うと考えての「GO」だった。
(2006年3月14日付日刊スポーツ)
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