侍ジャパン主将の巨人阿部慎之助捕手(33)が「狙い」を定めた。宮崎キャンプ第2クール2日目の8日、投手相手のフリー打撃に臨んだ。今キャンプ2度目の実戦想定の練習は25球のうち、3分の1以上の10球が見逃し。例年は積極的にスイングする時期だが、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を控え、早くもボールの「見極め」段階に入った。今日9日は日本代表山本監督が視察予定で、順調な仕上がり具合を報告する。

 阿部のバットは動かなかった。福田相手のフリー打撃。外角と高めに誘うようなコースだった2球を、平然と見逃した。内角をついた3球目はカットしてファウル。続く4球目の外角も、バットが止まった。「(外角は)今日は全部、捨てた。あそこを追いかけ過ぎると内角をバーンとやられるからね」と、早くも実戦さながらの選球眼で打撃練習に臨んでいたことを明かした。

 シーズン中の打撃練習では、ほとんど見逃しをしないだけに珍しい光景だった。10球目までに実に7球を見逃し。特に外角に関しては、ほぼ全球でバットが止まった。中には際どいコースで球審が、ストライクと判定したボールもあったが「まあ、しっかり見ることだよ」と、ストライクゾーンもしっかりと確認した。例年は体を仕上げる意味でも、キャンプでは積極的にスイングしてきた。だが、今キャンプは2度目の投手相手のフリー打撃でテーマは「体作り」から「実戦感覚」に切り替わっていた。

 急ピッチの調整だけではなく、国際大会への対策も意味している。「過去の大会でも実感しているけど傾向として日本よりも外が広い。だからといって、無理に追いかけ過ぎるとドツボにはまる」と、WBCでは外角球への対応が打撃のカギを握るとにらんでいる。昨季は歴代捕手最高の打率3割4分をマーク。その数字をアシストしたのは自己最多の69個の四球でもあり、昨季途中に自ら命名した「見る見る打法」をWBCでも継続するつもりだ。

 今日9日と11日の紅白戦で日本代表山本監督が視察に訪れる。「代表選手で離脱者が続いているから『抑えてやれよ』って言われそうです。でも、合宿に入ったら練習量が減るから今のうちにやっておかないと」と、にっこり笑った。体、気持ちに加え、早くも感覚も研ぎ澄まされつつある。【為田聡史】