左肘痛の悪化でWBC日本代表候補の辞退危機に陥っていた中日大島洋平外野手(27)が9日、復活をアピールした。名古屋市内の病院での治療で状態が良化。1軍北谷キャンプに復帰し、6日ぶりとなるキャッチボールやティー打撃で回復を示した。再発防止へ慎重を期して10日も別メニューとなるが、初の日の丸を背負っての3連覇貢献に気合を入れ直した。

 20メートル、30メートル、そして40メートル。大島がどんどんキャッチボールの距離を広げた。北谷の屋内練習場。1球1球左肘を確認しながら、ライナー性のボールを投じた。15分間の“肘慣らし”を終えると、30分で165スイングのティー打撃だ。こちらも故障前と変わらないほど力強く、しっかりボールをたたいた。

 「もう大丈夫です。痛みも違和感もないです」

 投げるのも打つのも4日の故障発生後初めてで、当初の予定より1日前倒し。投打の復活ショーで日の丸OKをアピールした。

 「ネズミ(遊離軟骨)が変な方向に入ってしまっていました。あまりにもひどかったら、名古屋でも治らないなら、考えようと思いました」

 1度は代表辞退も覚悟したという。7日に緊急で名古屋に戻り、かかりつけの治療院で受けた関節潤滑薬の注射などのおかげで劇的に回復。遊離軟骨が関節にはさまり、曲げ伸ばしさえできなかった左肘が、ほぼ元通りに戻った。この日午後、笑顔で2日ぶりに北谷へ復帰。元気になった姿を山本代表監督や自軍の高木監督に届けたかった。

 もちろん油断はできない。「まだ治りかけ」と自覚するように、再発の危険性も潜んでいる。慎重を期し、10日も別メニューで状態を確認。代表選考が始まる宮崎合宿初日の15日へ、逆算調整で臨む。

 「もう1回やるわけにはいかない。高木監督にも好きなようにやれと言ってもらったし、今は焦らずペースも落として我慢。15日に100%で動けるようにしたい」。不動心で残り5日間を有効に使う。

 昨年12月に将来のメジャー挑戦願望も明かした大島にとって、WBCはその名を挙げる絶好の舞台だ。「出るために名古屋に帰ってまで治療してきました。大会に出ることで自分も成長できると思うので」。ついえそうになった夢を、その手でもう1度たぐり寄せた。「世界のOHSHIMA」になるために、自身の肉体との勝負も始まった。【松井清員】

 ◆大島の経過

 山本代表監督が北谷キャンプを視察した4日に遊離軟骨が原因の左肘の張りを訴え、キャッチボールや打撃練習を回避。3日間のノースロー&ノースイングが課された。復帰予定の7日に症状が悪化。検査と治療のため名古屋に戻り、佐藤球団代表は最悪なら代表辞退の可能性を明かした。7日からの2日間で主治医のいる名古屋市内の病院と治療院3カ所を回り、関節潤滑薬の注射などの治療を受けて奇跡的に回復した。