ソフトバンク森福允彦投手(26)が「減速シュート」を侍ジャパンへの手土産にする。12日、宮崎キャンプのシート打撃に志願登板。目的は「抜いたシュート」のテストで打者7人を無安打に抑えた。緩急と曲がりを自在に制御できるスライダーと同様、シュートの多様性をアップ。新しい武器をWBCで駆使する。

 森福は「打者の反応と捕手の意見を聞きたい」と高山投手コーチに申し入れた。急きょ、シート打撃に登板。目的は新球種の実験だ。

 左打者の柳田への2球目だった。内角をえぐる123キロのシュート。中途半端なスイングで空振りした柳田は「スライダーの軌道で待っていたら、真っすぐに来てクッと落ちた」とびっくりだ。同じく左打者の城所にも、曲がり幅の大きな115キロのシュートを試投。森福は「抜いたシュートです」と笑っていた。

 この日、シュートの最速は130キロだった。指先のわずかなさじ加減で最大15キロの緩急をつくり、曲がり幅にも変化を生んだ。捕手の山崎は「抜いた方は曲がり幅が大きくなって食い込んでいきますね」と証言。同じ球種の中に“亜種”を設けて目先を狂わせる。森福は「外国人選手には緩急が効果的と思う。短期接戦では手の内を明かしてもいいですから」とWBCをにらんだ開発だと明かした。

 もともと、スライダーは同じ軌道から曲がり幅とスピードを自在に操ってきた。その「無段階変速型」のスライダーも健在だ。スライダーに空振り三振した本多は「真っすぐと思ったら横滑り。ブレーキがかかっていた」と驚いた。109キロで二飛に仕留められた松中は「同じフォームからの抜いたスライダーですよ」。ベース上の3次元空間に加え、緩急という時間軸も操ってみせた。

 打者7人と対戦し、無安打1四球、2奪三振。「実戦を想定して球自体は悪くないし、バランスもいい。左の内角を意識してしっかりコースも決まりましたね」。シート打撃では珍しく一塁けん制のサインも出て、実戦に近いマウンドだった。明日14日午後の侍ジャパン合流を直前にしたテストを終了。秋山監督も「いいんじゃないの~」と話した。減速した新シュートの即席テストに手ごたえ。森福最大の武器、制球力を実証した。【押谷謙爾】