<WBC強化試合:日本代表候補0-7広島>◇17日◇サンマリン宮崎

 侍ジャパンが、赤っ恥スタートを切った。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表候補が強化試合で広島と対戦。初の対外試合で、打線がわずか3安打と沈黙し大敗した。広島の先発前田健、2番手今村の代表候補からは安打を放ったが、4回以降は若手投手陣に無安打と、完全にひねられた。山本浩二監督(66)もご立腹の船出。今日18日に同球場で非公開で行われる西武戦で汚名返上を期す。

 のしのしと悠然と歩き、会見場に姿を現した。山本監督が小鼻を膨らませ、照れ隠しのように放った第一声に本音が詰まっていた。敗戦の弁は、丁寧語だった。「見ての通り、完敗でございます」。本番を想定した現状のベストメンバーで臨みながら、1点も奪うことができなかった。2万7000の観衆が拍子抜けする、船出になった。試合後、選手に「今日は許すけれど、次は許さない」とゲキを飛ばし、きつく手綱を締め直した。

 赤ヘル軍団に圧倒された。「赤い稲妻」の異名を持つライバル国キューバのユニホームに少し似ているが、相手は若手主体。エースの田中を先発させ、打線はレギュラー候補を並べた。右肩に不安を抱えて本調子ではない前田健から2安打、評価急上昇中の今村から1安打。侍投手陣の2人からは快音を響かせたが、4回以降は「ノーヒットノーラン」。投手陣の乱調も重なった。スタンドの野球少年が無邪気に「弱ぇ、弱ぇ。(広島)堂林を(代表に)入れたらいいのに…」と嘆くほど、見せ場がなかった。

 ウイークポイントを発見できたことが、収穫だった。純国産メンバーで臨む今回の攻撃パターンのキーワードは「つなぎ」。巧打者タイプをそろえ、機動力も駆使して得点を奪う構想を描いていた。この日は27アウトのうち、フライによるものが12個(ライナーは除く)。調整段階のため各自に打撃スタイルを任せたところ、沈黙した。山本監督は初陣で得た教訓から、確信したことがある。「点が入らないケースが出てくる。各選手が塁に出るということを考えて、エンドラン、バントとかそういうことをやらないといけない」。

 大敗後のグラウンドには、強い自覚と責任感が充満した。リードオフマン長野が6回に三ゴロを放った際に、自分でファウルと判断。一塁へとスタートを切らずにアウトになってしまう、雰囲気を壊すようなプレーもあった。その長野をはじめ、稲葉、中田ら8人が志願の特打を敢行した。打撃投手を務めた主将の阿部は「僕らは技術が一流だから、少しでも早く上げていきたい」と表情を引き締め、先に控える正真正銘の激闘を見据えた。【高山通史】