侍ジャパンの“救世主”にダルビッシュが急浮上!

 26日(日本時間27日)の大リーグのオープン戦で、レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)とWBCブラジル代表のアンドレ・リエンゾ投手(24=ホワイトソックス)が投げ合うことが濃厚になった。3月2日のWBC1次ラウンド初戦で先発予定の右腕の情報が、ダルビッシュから侍ジャパンに提供される可能性がある。今回は出場辞退したメジャー右腕が、意外な形で心強い援軍になりそうだ。WBC日本代表は21日、15日から行っていた宮崎合宿を打ち上げた。

 ダルビッシュが純国産の侍ジャパンに「特別スコアラー」として加わるかもしれない。初戦の相手ブラジルの戦力を解剖するキーマンになる可能性が出てきた。26日にレンジャーズのキャンプ地の米アリゾナ州サプライズで、ホワイトソックスとのオープン戦に初登板。先発で投げ合うことが濃厚なのが、ブラジル代表の先発陣の目玉リエンゾだ。日本代表が今、もっとも注目している不気味な存在の右腕。WBCへの調整登板は、徹底分析するための格好のチャンスになる。

 苦渋の決断で今回の出場を辞退したダルビッシュだが、依頼があれば、代表のために一肌脱ぎそうだ。リエンゾは最近のデータなど資料が、やや不足している選手の1人。24歳と若く、ホ軍の40人枠に入る伸び盛りで招待選手としてキャンプに参加している。過去の動画などはあるが、成長度や仕上がり度は不透明で、今回のダルビッシュ相手の調整登板は貴重な資料になる。代表関係者は「招待選手なので全力で投げるはず。直近の投球は確認したい」と有意義なチェックのチャンスと説明した。

 独特で天性の野球勘を持つダルビッシュの「眼」で得た攻略法は、日本代表の各打者へ生きたバイブルになる。ダルビッシュは打者の動き、反応などで、どの球種が有効かなどを瞬時に判断できるようなセンサーを持つ。それは投手に対しても同じ。リエンゾは150キロ超の直球に縦に大きく割れるカーブにスライダーなど、球種も豊富との事前情報があるが、ポイントを絞ることも可能だけに、生かさない手はない。

 ホットラインもある。日本ハムの先輩の稲葉、後輩でかわいがっていた中田、プライベートでも親交ある巨人坂本らが今回、代表入り。申し入れがあれば快く引き受けてレクチャーを施すおとこ気もある。ダルビッシュ自身はコンディションなどを加味して辞退せざるを得なかったが、愛国心は強い。山本監督が「目の色が違ってきた」という代表28人への手助けは大きな力になりそうだ。日米と離れてはいても日本を思う心は1つ。日の丸は背負えなくても、ダルビッシュが侍ジャパンの「一員」として戦えるすべはある。【高山通史】

 ◆アンドレ・リエンゾ

 1988年7月5日、ブラジル・サンパウロ生まれ。06年にホワイトソックスに入団し、09年までルーキーリーグ、10~11年に1Aでプレー。11年シーズン後に薬物規定違反で50試合の出場停止となったが、昨季は1Aから3Aまで昇格し、期待の若手として注目される。最速153キロの速球と鋭いスライダー、チェンジアップを持ち、投球フォームは通算204勝を挙げた名投手オーレル・ハーシュハイザーに似ているといわれる。昨年11月のWBC予選では初戦のパナマ戦に先発し3回2/3を4安打2失点(自責1)。191センチ、86キロ。右投げ右打ち。

 ◆WBCブラジル代表の投手陣

 日本球界経験者が多く“第2のサムライ軍団”とも言える。リエンゾと軸になるのはヤクルトのフェルナンデス。日本では通算10試合で1勝0敗、防御率8・31。昨年11月のWBC本大会進出決定戦(対パナマ)で先発、6回2安打無失点。初進出に貢献した。またホンダの仲尾次オスカルも同予選のコロンビア戦に先発し4回5安打無失点と好投。主力の左腕になる。