侍ジャパンの内海哲也投手(30)が、26日に行われる阪神との強化試合(京セラドーム)で先発することが21日、明らかになった。右肩に不安のある前田健太投手(24)の先発が、本番まで残り10日を切っても流動的な状況。山本監督は、故障がなく、急きょの登板でも安定感を発揮する内海に信頼を置き、あらゆる有事に備える構えだ。2年連続最多勝の実力者がチームの危機を救う。

 WBC1次ラウンド初戦まで実戦は4試合。貴重な先発の1枠は内海に与えられた。28人の最終メンバーで練習を終えた左腕は「選ばれて、うれしい。あとちょっとしか時間がない」と険しい表情だった。

 首脳陣は内海の安定感に着目。26日の強化試合の阪神戦に先発させることで、自在な先発陣の編成が可能となる。ここから中7日なら、3月6日のキューバ戦に調整十分で登板できる。だが有事における備えとしても、内海に期待している。

 3月3日の中国戦は、1次ラウンド突破がかかる重要な試合になる。前田健をここに先発させる青写真があるが、肝心のマエケンは右肩に不安を抱えていて、24日の壮行試合オーストラリア戦登板で最終チェックを行う予定だ。仮にここでGOサインが出ても、当日ギリギリまで何が起こるか予断を許さない。前田健が登板できない事態となっても、内海を配しておけば浮足立たずに済む。

 緊急事態を何度も救ってきた実績がある。練習豊富な内海は故障とは無縁で、馬力がある。ここ一番での中4日、中3日での先発も悠々とこなす。09年の日本シリーズ第6戦では、危険球退場を受けて1回途中からロングリリーフを決め、巨人の日本一に大きく貢献した。宮崎合宿最終日のこの日も、投手陣で最多となる107球の投げ込みを敢行した。「オフの時間を割いて、必死にやってきた。家族に感謝です」と話す通り順調で、3月2日のWBC1次ラウンド初戦に照準を合わせて調整を進めている。

 「4年前の悔しさを晴らしたい」と意気込んだ。09年のWBCは苦い思い出として残っている。2次ラウンドの韓国戦に先発したが制球に苦しみ、3回途中で降板。登板はこの1試合に終わった。「成長した自分をマウンドで表現する」を合言葉に、宮崎合宿でもアーリーワーク、体幹トレーニングに打ち込んだ。調子のピークをWBCに持っていくシナリオ通りに歩を進め、万全で本番を迎える。「落ちてしまった5人のためにも、自信を持って投げたいです」と内海。屈強な左腕が侍を支える。