4番だけは不動!

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の阿部慎之助捕手(33)が25日、志願の休日返上で3連覇への決意を新たにした。完全休養日にもかかわらず、たった1人で京セラドーム大阪に現れ、約1時間汗を流した。好不調の波を見極めて大胆な打線の組み替えを進める山本監督も「4番阿部」の変更はないことを明言し、主将と心中する覚悟を示した。

 じっとしていられない「侍」がいた。日本代表にとって、体をゆっくり休められるのはこの日が最後。首脳陣は完全休養日にすることを決め、京セラドームの全体練習をキャンセルした。だが、午後3時すぎ、白木のバットを肩にかついだ阿部が地下の駐車場に現れた。「(壮行試合で)久しぶりに緊張感のある試合をしたんで。少しだけ体を動かそうと思って。散歩しにきただけですよ」。バリバリに張った体をケアするための休日返上だった。

 攻守の中心として期待されながら、もどかしい日々が続く。打撃の調子はいまひとつで、10得点で大勝した前夜のオーストラリア戦も得点には絡めなかった。「(外国人特有の)動くボールにまだ対応できていないですね」。捕手としても、田中、前田健らとの呼吸やリードにも課題を残したまま、本番を迎えることになる。代表経験は豊富だが、チームを背負う立場として臨む今回は、両肩にのしかかる重圧が違う。不安がないはずはない。

 そんな主将に、山本監督は揺るがぬ信頼を示した。壮行試合2試合で、1番坂本、3番内川など打線をシャッフル。好機で回ってくる3番に好調内川を配し、4番の負担を少しでも軽減させる。各自の状態を見極めながら、大胆な打線の組み替え。それでも、阿部だけは別格とし「打たなくても、慎之助を(チーム全体で)フォローしていく形は取れる」と、好不調に関係なく4番に据えることを明言した。

 山本監督の発言を伝え聞いた阿部は「僕と心中するつもりなんですね。そこまで信頼していただけるのなら、やらないわけにはいかないです」と、何かを決意した表情を見せた。09年のWBCを最後に代表から退くつもりだったが、山本監督の就任で「もう1度」という気持ちになれた。北京五輪で、ともに屈辱を味わった指揮官を「今度こそ胴上げしたい」という思いが、代表でのモチベーションを支えている。山本監督が心中する覚悟を知り、迷いは消えた。

 たった1人の休日練習で、モヤモヤした思いはふっ切れたようだ。約1時間の練習を終え、ロッカールームから出てきた阿部は、いつもの明るさを取り戻していた。「この球場のサウナが大好きなんで。お風呂を独り占めできて良かったです」。主将として、正捕手として、そして4番として…。すべてを背負いチームを引っ張っていく覚悟は固まった。【広瀬雷太】