単なる順位決定だけの試合にはしない。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表が今日6日、1次ラウンド最終戦のキューバ戦に臨む。すでに8日からの2次ラウンド(東京ドーム)進出は決定し、1位通過をかけて戦う。山本浩二監督(66)はガチンコ勝負を宣言したが、対戦相手などを見越した戦い方など、さまざまな見解がある。密着取材を続けている工藤公康氏(49=日刊スポーツ評論家)は、どう見ているのか。B組は1位台湾、2位オランダが確定。2次ラウンドではキューバ戦に勝てばオランダ、負ければ台湾と対戦する。

 侍ジャパンが2次ラウンド進出決定から一夜明け、再始動した。ヤフオクドームで午前9時にスタートした全体練習。第1関門を突破したリラックスムードの中でも、打撃不振の稲葉、長野が志願の特打を行うなど精力的に最終調整。キューバ戦へ向けて備えた。

 前日4日にA組2位以内が確定した。2次ラウンドで激突するB組は5日に順位が確定し、キューバ戦の勝敗で対戦相手が決定する。キューバ・メサ監督は「一番、重要なのは日本戦じゃない」と明言。くみしやすい相手と対戦するため、故意に手綱を緩める考えも示唆している。対する山本監督は違った。「チームの戦い方は、そのゲームを勝ちにいくこと。それをしないと2次ラウンドにも、つながらない。いい状態に持っていくため」。

 先を見据えた戦略よりも、ガチンコ勝負をしないことによる全体の士気の低下を重要視していた。それが果たしてベストなのか-。この日の練習を視察した工藤氏も賛同し、全力でぶつかる意義を説いた。

 工藤氏

 勝つべきか負けるべきかは難しい選択で、高度な戦略といえる。2次ラウンドはゴールではない。ただし選手の立場で言えば「勝つこと」しか考えない。キューバに勝つことを期待する。2次ラウンドで戦う可能性があり、日本は強いというイメージを植え付けるのは大事だと思う。

 2次ラウンドでもライバルになるキューバ。手の内を見せてこない可能性もある。山本監督は「こっちは普通に戦う」と力説した。工藤氏は布石にする可能性もあるとみた。

 工藤氏

 バントやバスターの練習をしていましたが、あれは日本の報道陣に見せるための練習でしょう。「こういう野球もやるよ」というアピールにすぎないのでは。どう見ても、普段はバントしたことない感じだったから。足を引きずって歩いていた選手が突然、盗塁練習したときは、足の負傷もダミーなのではと思う。いろんなことをしてくるな、という印象。

 2次ラウンドの組み合わせは、この日の勝敗で決まる。山本監督は「まだそこまで見ていない」としたが、工藤氏は「何と言っても初戦が重要。初戦に負けると後がない」と2次ラウンド突破のための条件を提言した。B組を突破した台湾とオランダ。日本代表との相性を占った。

 工藤氏

 台湾はアジアのチーム。アジアのチームの方が、戦いやすさはある。データが少ない中でもアジア人だったら、どんなスタイルなのか、どんなタイプなのか、ある程度分かる。オランダは、とんでもないスイングをする選手もいるだろうし、分からない。分からないのは不気味。オランダの方が嫌だと思う。日本代表のある首脳陣も言ってました。「台湾の方がいい」と。

 今日の勝敗で2次ラウンドの行方が、見える。目指す世界一への軌跡が描けることになる。【取材・構成=高山通史、金子航】