WBC米国代表を陰から支えている日本人女性がいる。同地でアスレチックトレーナーとして活躍する谷沢順子さん(42)。かつて中日の主砲として人気を集めた谷沢健一氏(69=野球評論家)の長女で、今大会は「マニュアルセラピスト」として選手のマッサージ、体のケアを担当している。「みんな優しい人ばかり。できる範囲内でアシストしながら、自分のベストの仕事をすることです」と高いプロ意識をのぞかせる。

 アリゾナ州フェニックスを拠点に、スポーツ選手のトレーニングや治療に携わる谷沢さんは、04年以来、陸上の米国代表トレーナーを務めてきた。昨年のリオ五輪をはじめ、07年大阪、13年モスクワ、15年北京などの世界陸上に「出場」。世界記録保持者やメダリストからも頼られる存在として知られる。今回は、知人でもある大リーグのトレーナーから打診され、その後、正式オファーが届いた。

 トレーナーの道を選んだ背景には、父健一氏の存在があった。現役時代、持病のアキレスけん痛と向き合う父の姿を見て育ち、幼い谷沢さんがマッサージを手伝うこともあった。大学卒業後、渡米したため、今では会う機会も少ない。それだけに、今回の米国代表招集には「父もすごく喜んでくれてます」と笑う。

 米国が勝ち進めば、決勝トーナメントで侍ジャパンと対決する可能性もある。「そういう時は両方応援します」。物心がついた時から、常に野球に囲まれた環境で育った血筋。父が愛する野球との「再会」に、目を輝かせていた。【四竈衛】

 ◆谷沢順子(やざわ・じゅんこ)1974年(昭49)6月24日、名古屋市生まれ。名古屋女子大付高、武庫川女子大時代は新体操の選手。卒業後、テキサス州立大で学び、米国公認アスレチックトレーナーの資格を取得。03年パドレスでインターン研修。家族は両親、兄、妹。