そこに飛べば、菊池がいる。先発千賀の好投をアシストした。両チーム無得点の6回1死。1番フルドが放った一、二塁間へのゴロに、二塁を守る侍ジャパン菊池が反応した。重心を下げて走り、足を投げ出してスライディング。下半身が人工芝の上を滑る間に捕球し、勢いを利用して体の向きを変える。完全に起き上がる前にスローイングに入り、一塁へ。中軸へつながる前に、ピンチの芽をつんだ。

 「僕が出来る範囲のことはしようと思っている。チームも流れに乗ってくれてよかったです」

 疑いが根底にある。本拠地マツダスタジアムは内外野が天然芝で、走路から守備位置が土。「イレギュラーはあるものだと思ってやってきた。まずは止めることだった。だから人工芝は楽」と明かす。守備位置の基準はボテボテをさばける位置。肩が生き外野の芝まで下がる。「いろんなことを考えさせてもらった」。グラウンドキーパーとも話し合いを重ね「芝は一定になったし、マツダと一緒に成長したね」と笑う。

 キーパーは「雨が降るとキクのすごさが分かりますよ」と言う。水たまりの範囲が二塁の手前から一、二塁間まで大きく横長に広がる。他のポジションは定位置の付近にしかたまらない。守備範囲の分だけ土が軟らかくなり、水がたまりやすくなっている。「それだけ動いているということです」。決勝ラウンドの舞台はマツダスタジアムと同じ形状のドジャースタジアム。菊池は「アウェーかもしれないけど、守備からリズムをつくっていきたい」と自信を見せた。

 打っても6回1死満塁から、詰まりながらも右前適時打。12打席ぶりの安打をしぶとく運び試合の流れを決定づけた。「小細工し過ぎていた。好機をつぶさないようにとだけ考えていた」。打っても、守っても、確実に仕事をする男。舞台を米国に移しても、変わらぬスタイルが頼りになる。【池本泰尚】