エースがねじ伏せた。侍ジャパンの菅野智之投手(27)が6回を被安打3、1失点(自責0)、6奪三振の好投で米国打線と対等以上に渡り合った。

 雨が降りしきるドジャースタジアムのマウンドで闘志をむき出しにした。「今日は大事な試合とみんな分かっていたし、自分も重々理解していた。立ち上がりだけ気をつけようと。ただ、こういう独特の雰囲気。今まで味わったことのない雰囲気だった」。総額130億円超の米国打線を相手に堂々の内容だった。

 登板最終回の6回2死。アレナドを2ナッシングに追い込み、最後はアウトローへの153キロ直球で見逃し三振に斬り捨てた。気合十分のガッツポーズでベンチに引き揚げる。「こういう大一番で自分の力をしっかり出せたのは自信になっていくと思う。でも裏を返せば、1試合いい投球をしただけなので。言えることは、今日の試合は野球人生で最高の経験になった」。ここまでの野球人生の全てをかけると宣言して臨んだ今大会の最後の1球が“収穫”を物語っていた。

 敵将も目を見開いた。米国リーランド監督は「彼はメジャーリーガーだ。どれくらい印象に残ったかを伝えられないほどだ。本当にいい。速球は外角のコーナーに制球できるし、カウント3-0からでもスライダーを投げる。とても印象的だった」と絶賛。メジャーでも十分に通用すると太鼓判を押された。

 世界一には届かなかったがエースの重責を全うした。3試合に登板し、最も重要とされる準決勝のマウンドで臆することなく腕を振り切った。15日のイスラエル戦での好投を見て、千賀が準決勝に登板することが頭をよぎったという。だが、小久保監督から指名され「何とか恩返ししたかった」との思いもあった。菅野が敵地で日本野球の意地をぶつけた。【為田聡史】