ボクシングのWBC世界フライ級王者内藤大助(35=宮田)と、同級3位亀田興毅(23=亀田)の29日の世界戦(さいたまスーパーアリーナ)の調印式と記者会見が27日、都内で行われた。両者は会見で目を合わさず、恒例の写真撮影も両陣営の合意で行われなかった。亀田は調印式直後に得意の「メンチ切り」に出たが、内藤は応じることなく、クルリと背を向けると「知らねえよ」と言い残して会場を後にした。

 調印式と会見が終わると、興毅が立ち上がった。ポケットに手を突っ込んだまま、内藤の方を向いてにらんだ。亀田家おなじみの「メンチ切り」パフォーマンス。1歩、2歩と近づいていく興毅と、立ち上がった内藤の視線が一瞬だけ重なった。しかし、内藤はにらみ返すこともなく、ほとんど無反応。クルリと背を向けて出口へ歩き出した。

 肩すかしを食った興毅は、内藤の姿が見えなくなるまでメンチ切り。会見では丁寧語で淡々としていたが「全然乗ってけーへん。1回、目を合わせたのに逃げた。だいぶん緊張しているんちゃうか。それやと(内藤は)良い結果がでーへんわ」。父史郎氏も「根性ないわ」と語気を強めた。内藤は追いすがる報道陣から「にらまれていた」と聞かれ、しばしの沈黙後「知らねえよ」と声を荒らげた。

 内藤と興毅は9月24日の発表会見以来、約2カ月ぶりの対面だった。約24分間続いた調印式と会見では、同じ壇上に並びながら1度も目を合わせず、約130人の報道陣らですし詰め状態の会場には緊迫感が漂った。24日の予備検診は約30分の時間差で行われたが、「みんなの意向で円滑に進めるため」(宮田会長)との理由から、この日も両者並んでの写真撮影はなし。28日の前日計量後の写真撮影についても、宮田会長は「流れ次第」と、警戒感をにじませるなど、周囲は異様にピリピリしている。

 05年1月、興毅が週刊誌上で「あんなの弱い」と酷評してから、両雄の因縁が始まった。その最終章というべき今回の世界戦の前売り券は約2万枚が売れ、日本人同士の世界戦では最多の入場者数となりそうな勢いだ。「あとは気持ち。弱気になった方が負ける」(内藤)「オレはドーンと構えてるから。もう王者になってる気持ちや」(興毅)。にらみ合わなくても“火花”は激しく飛び散った。【浜本卓也】