ボクシングWBC世界フライ級王者内藤大助(35)対同級3位亀田興毅(23)の世界戦(さいたま市・さいたまスーパーアリーナ)が29日夜、東京・新橋駅前SL広場の大型「街頭テレビ」で生中継された。同地での街頭テレビ格闘技中継は昭和20年代後半、プロレスラー力道山の試合が流されていた時期以来とみられる。ただ、日曜夜でサラリーマンはおらず、冷え込む中で雨が降り出したこともあり、長時間足を止めた聴衆は、最大でも200人程度だった。

 「街頭テレビの聖地」新橋駅前SL広場にも、久々に格闘技の試合が生中継された。TBS系列の全国生放送を流したのは、広場に面したビルに設置された大型ビジョン「ファロシティビジョン」。午後8時半ごろゴングが鳴ると、約350 インチ (縦約4・3メートル×横約7・7メートル)のカラー画面に内藤対亀田のド迫力殴り合いが映り続け、広場には実況席の「亀田の左だ ! 」「内藤の右だ ! 」という叫びが響き渡った。駅前は異様な雰囲気に包まれた。

 しかし、聴衆は決して多くなかった。サラリーマンの街だけあって、もともと日曜夜の人通りが少ない上、気温は低く、試合開始前後から傘が必要なほどの雨が断続的に降り続けた。広場には、混乱に備え、警備員が5人配備されたが、ほとんど出る幕がなく「平和」に終了。通り掛かりに中継に気付いた人がほとんど。足を長時間止めた人は、最大時間帯でも200人程度だった。

 ただ、駅前ビルの軒下や、新橋駅ホームなどでは雨宿りしつつ熱心に視聴する人も多かった。都内の会社員杉本昌範さん(45)は阪神タイガースグッズの携帯いすを持参し、広場に座って視聴。「大型スクリーンで見たかったので来た。試合は少し、もの足りなかった。もっと殴り合う試合を見たかった」と話した。

 友人と東京に買い物に来ていたという浜松市の会社員男性(30)は「東京の土産話になればと思い、見に来た」。1人で観戦していた都内の女性会社員緑川真由さん(25)は「ボクシングが好きなので、新橋で仕事を終えた後、7ラウンドから広場で見た。内藤選手を応援していたので、負けて残念。街頭テレビは、いいと思う。こういうことでボクシングがメジャーになれば」と話した。数十人に聞いたところ、内藤ファンが過半数だった。

 同地における街頭テレビ格闘技中継は、力道山のプロレス放映が人気だった昭和20年代後半以来とみられる。54年(昭和29)2月に行われた力道山、木村政彦組対シャープ兄弟の一戦では、約2万人が広場に集結するなど、戦後を象徴する社会現象となった。【広部玄】