「浪速の番長」がボクサー人生の岐路に立たされた。元WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(28=井岡)が8月31日のWBA世界ライトフライ級タイトルマッチで、王者田口良一(ワタナベ)に0-3判定で敗れた。「実力を出せなかったのが、弱いということ。やりづらいというか、すべて自分のせいです。相手どうこうじゃない。自分にむかついてます」と、悔しさをあらわにした。

 順風だったボクサー人生が暗転したのは、13年大みそか。WBAミニマム級王座返上直後のノンタイトル戦で、減量苦が響き初黒星を喫した。1度負けたら、やめるつもりだった。「着飾るものなんかいらん。髪の毛もいらん」。すぐに頭を丸刈りにしても、気分は晴れない。約3カ月、ジムから足が遠のいた。井岡会長とも距離を置いた。だが、不本意な敗戦のままでやめられなかった。「オレはボクサー宮崎亮やのに、何してんねん」。再起を決意した。

 戦う土台から作り直した。管理栄養士を付け、筋肉がついても絞りやすい体への改善に着手。減量中の食事も野菜スープだけではなく、肉を積極的に取り入れ、今年は常に体重50キロ台半ばを保った。「赤身の肉は食べても肥えない。アミノ酸のLカルニチンが、脂肪を燃やしてくれるんです」。低血圧の体を考え、鉄分はサプリで補給した。体調を管理するプロ意識を高く持って、2階級制覇へ挑んだが、実現はならなかった。

 「この一戦に進退をかけている」と、決死の覚悟で挑んだ3年ぶりの世界戦。敗れた宮崎は今後について「何もまだ考えてないですけど、反省して考えます」と話した。“肉を切らせて骨を断つ”という、被弾覚悟の徹底攻撃も魅力の宮崎だけに、攻めきれなかった田口戦の内容は自分でも納得しがたいだろう。グローブを置くのは、まだ早い。もう1度、リングで勇姿を見せてほしい。【木村有三】