沖縄の2文字が目に留まるな。そう思っていた年末年始だった。

 政治の話はもちろんだが、本稿に至ってはボクシングの話。亜熱帯気候育ちのボクサーたちが、17年のリングを騒がしそうな予感がしている。

 最大注目は東洋太平洋フライ級王者、比嘉大吾(21=具志堅・白井)の世界取り。具志堅用高会長の特集映像を見たことがきっかけで宮古島市の宮古工業高で競技を開始した新鋭は、ここまで11戦11勝(11KO)のパーフェクトレコードを積み上げる。同会長からの直々のスカウトにより上京して5年あまり。「会長と同じ21歳で世界王者に」を命題に掲げ、そのリミットは今年の誕生日前日の8月8日まで。2月4日には「世界前哨戦」を目する試合を組んだ。準備は着々と。

 沖縄県生まれの世界王者(暫定はのぞく)が生まれなくなって久しい。最後にベルトを持ち帰ったのは92年4月にWBAジュニアウエルター級王者となった平仲明信。72年に本土返還されて以降、76年に具志堅用高が初めて世界一の冠を頂いた。那覇での凱旋(がいせん)パレードは何十万人という人であふれたという。それからは上原康恒、渡嘉敷勝男、友利正、新垣諭(当時IBFはJBC非公認)、浜田剛が誕生。81年には高校総体で12階級中6階級で沖縄県勢が占めるという勢いも。その中の1人が平仲だった。

 その後に訪れた四半世紀に及んだ沈黙に終わりを告げ、再び主役に躍り出る可能性を秘めるのが、「具志堅の秘蔵っ子」「具志堅2世」である比嘉だ。物語の葉脈は十分に太い。

 もっとも、比嘉だけが17年の希望ではない。昨年暮れの全日本新人王決定戦では、全12階級中3階級を制覇。スーパーライト級吉開右京(19=島袋)は、沖縄県出身者として03年の前堂真人以来となる最優秀選手賞に輝いた。中学から高1までは野球に打ち込み、「団体競技より個人競技の方があっている」とボクシングを志し、美里高2年時にボクシングの同好会を立ち上げてからまだ3年弱。その試合ぶりを見た関係者から「(93年新人王で元世界王者の)畑山隆則の当時を見ているかのような衝撃だった」と称賛される大器で、17年の勝ち上がり方も逃せない楽しみだ。

 昨年末に新人王が行われた後楽園ホールには比嘉も姿を見せ、吉開、ライト級王者の小田翔夢(18=琉球)らと集合写真を撮る一幕もあった。のちに、この3ショットが世界的にも貴重な「あの頃」の1枚になるかも。そんな想像もふくらませつつ、17年のボクシング界に沖縄からの熱い風を感じたい。【阿部健吾】