昭和の名横綱・大鵬の孫、納谷幸男(23)が14日のリアルジャパン後楽園大会で、プロレスデビューを果たした。初代タイガーマスクの佐山サトルが主宰するプロレス団体へ入団した13年4月から約4年。大鵬3世、将来の大器と期待された納谷が、ようやくプロの第1歩を踏み出した。

 納谷の父は、元大相撲の関脇貴闘力で、息子より先にプロレスデビューを果たしていた。今回、息子のデビュー日が決まり、後楽園大会のチケットを約500枚も売り、息子の援護射撃をした。当日の会場でも、私服姿でチケットを売った友人らを席まで案内するなど、休む間もなく会場を動き回っていた。その貴闘力は「ホッとした。ようやくここまでこぎつけた。これで巣立っていくのかなあ」と感慨深げに話していた。

 幸男は4人兄弟の長男。身長は、団体発表で2メートルと大きいが、気持ちが優しすぎ、闘争心が前面に出てこない。リアルジャパン入りしてからは、内臓を壊し長期休養を強いられたことも。貴闘力は、そんな長男を自分が経営する焼き肉店を手伝わせるこで、かげながら見守ってきた。試合当日は、故大鵬さんの夫人、芳子さんや、大鵬さんの三女で納谷の母親、3人の弟も応援に駆けつけた。

 そんなデビュー戦で、納谷は雷神矢口やそのセコンドからの攻撃に遭いながら、見事勝利を収めた。場外では有刺鉄線ボードに体をたたきつけられ、有刺鉄線バットで殴られた。さらに毒霧攻撃も食らい、顔は真っ赤、体は血だらけというありさまだった。それでも、豪快な右のキック、フライングクロスチョップ、さらに決め技のランニングニーリフトなど、会場を沸かせる大技も披露した。十分合格点をあげられるプロレスデビュー戦だった。

 大鵬さんの遺影や、父母にデビュー戦勝利をプレゼントし、3人の弟には兄としての威厳を示せた。試合翌日の納谷は「緊張したが、お客さんの歓声でいけると思った。勝てて良かった。でも、もっともっと練習してお客さんを喜ばせられるレスラーになりたい」と表情を引き締めた。大鵬3世という自分が背負った運命からは逃れられない。プロレスを知らない人からも注目される。佐山サトルは「アントニオ猪木、タイガーマスクに次ぐプロレスの星になって欲しい」と大きな期待を寄せた。素質と名前を生かすのは本人の努力だけ。そのことは納谷自身が一番分かっているはずだ。【プロレス担当=桝田朗】