新日本プロレスの「バレットクラブ」ファンならば待望の対戦カードだっただろう。海の向こう、米国で元ボス対決が実現した。10月22日(日本時間23日)、WWEのロウブランドによるPPV大会「TLC」(米ミネソタ州)で急きょ組まれた。初代ボスで、この日はデーモンバージョンのフィン・ベイラー(プリンス・デヴィット)は当初、ブレイ・ワイアットとの対戦が決まっていた。ところがワイアットが体調不良のために欠場。代役として白羽の矢が立ったのが、同じWWEのスマックダウンを主戦場とする2代目ボスのAJスタイルズだった。

 WWEではあるものの、2人の対決は新日本マットのムードが漂っていた。ヘッドロックとグラウンドの攻防でスタート。ベイラーが回し蹴り、延髄斬り、ロメロスペシャルを繰り出せば、AJも負けじと逆水平チョップ、フライングフォーアームで応戦した。場外戦もスリリングな内容で、会場から悲鳴も上がった。いつものWWEとは違う雰囲気に包まれると、途中にはベイラーが棚橋弘至の必殺技スリングブレイド、AJも後藤洋央紀の必殺技となる牛殺しで反撃した。

 終盤もエルボーの打ち合い、ベイラーがリバースのブラディサンデーに成功。AJの雪崩式フランケンシュタイナーを耐え抜くと最後はクー・デ・クラ(ダイビングフットスタンプ)で18分15秒、3カウントを奪った。熱気に包まれた会場。リングの中心で両者は向き合い、ウルフパックを決めた手をくっつけた。以前、新日本マットで繰り返されてきたバレットクラブの決めポーズ「TOO SWEET」。観客の盛り上がりが最高潮に達した瞬間だった。

 ベイラーは13年5月、新日本プロレスで自らバレットクラブを結成した。約1年後となる14年4月に退団。そのベイラーと入れ替わるようにAJスタイルズが新日本マットに登場し、バレットクラブの加入を表明した。そのため、2人が日本で一緒にユニットを組むことはなかった。急きょ組まれたカードだったが、同PPV大会のベストマッチと米国内で評価されていた。WWE上層部がどのように見ていたかは分からないが「バレットクラブ魂」が詰まった新日本プロレスらしい両者の戦いが米国で支持された意味は大きいだろう。【藤中栄二】