井岡一翔(28=井岡)は何をしてるんやろう。11月9日付でWBA世界フライ級王座を返上した。本来なら「日本ジム所属選手初の世界4階級制覇」を目指すとか、ポジティブな理由があってしかるべきやと思うけど、返上会見に井岡本人は出席せず、父親の同ジム・井岡一法会長が「予定していた大みそかのリングに調整が間に合わない」と説明。その上「モチベーションが上がらんのなら、引退せな仕方ない」てなことまで言うたから、驚いた。

 理由はケガでもない。「プライベートに時間を割かれたことによる練習不足」。歌手谷村奈南と5月に結婚した。新婚と言えば、そうやけど…。世界王者、しかも脂の乗った3階級覇者の“休業理由”としては、異例でしょう。まして、口癖が「唯一無二のチャンピオンになりたい」やった男としては。

 井岡のプロデビュー後最長ブランクは、15年12月31日、WBAフライ級王座の2度目の防衛戦(レベコ相手に成功)からララ相手に3度目の防衛を飾った16年7月20日までの「202日」やった。このコラムは12月4日に書いてるわけやが、直近の試合が4月23日、ノクノイとの5度目の防衛戦やから「225日」。気づけば記録? を更新してました。

 日本ボクシング界は動いてる。ロンドン五輪金メダリストの村田諒太はWBA世界ミドル級王者になって、日本人が中量級のベルトを奪う快挙を成し遂げた。WBO世界スーパーフライ級王者の“怪物”井上尚弥は12月30日に7度目の防衛戦を行う。

 井岡と同じフライ級では、木村翔が北京&ロンドン五輪金メダリストの中国の英雄・鄒市明からWBOのベルトを奪った。WBC王者で具志堅用高の秘蔵っ子、比嘉大吾はデビュー14連続KO勝ちの離れ業を演じて初防衛に成功した。さらに、将来的な“5階級制覇”を掲げる田中恒成がこのほどWBOライトフライ級王座を返上、おそらくは3階級制覇に動く。

 ところが、井岡は…。昨年まで6年連続でやってきた、恒例の大みそかファイトが途切れる。少し前まで間違いなく、日本の王者の中で特別な存在やったけど、今では蚊帳の外。ワン・オブ・ゼムに成り下がってきたんやないやろか。

 妻の谷村奈南は王座返上返上2日後の11月11日、ツイッターに「必ず本人が、ファンの皆さんへ真実をお伝えします」と書き込んだけど、井岡は依然沈黙を守ってる。まあ他の王者の試合が集中する年末に、水を差すわけにはいかんやろうけど、せめて年が明けたら、公の場で自分の口から現状を語ってほしい。それこそがファン、世間への王者の責任やないでしょうか。【加藤裕一】