井岡一翔…いや、もう井岡一翔さんになるんか。昨年12月31日午後11時過ぎから引退会見を開いたミニマム、ライトフライ、フライの元世界3階級王者。その日は、東京・大田区総合体育館でトリプル世界戦があり、2つめの世界戦後の午後9時過ぎに現場を離れ、会見場の新横浜プリンスホテルに向かった。

 「何でこのタイミング?」と多くの関係者は思ったと思う。「5度目の防衛戦の前に(引退を)決めていた」というが、その試合は半年以上前の4月23日やったのに。会見の模様は、TBSが生中継した。本人は「6年間戦ってきた大みそかという特別な日に、自分の思いと感謝をみなさんに伝えたかった」と言うたけど、これまで大みそかに中継してきたTBSの視聴率に貢献できれば…てな思いからちゃう? などと、どうしても考えてしまう。

 まあ、それはええか。問題は、完全に引退するんかということです。

 勝手な推測ながら、復帰すると思う。なぜか? まず、あれだけ「唯一無二のチャンピオンになりたい」と言い続けた人間の幕引きにしては、あまりにあっけないから。「3階級制覇達成」を理由に挙げて「おじさん(元世界2階級王者・井岡弘樹氏)の時から井岡家が目指していたもの。それ以上のものは現段階で感じられなかった」と言うけど…。いまひとつ説得力に欠けるんちゃいます?

 ちなみに、4月23日の5度目の防衛戦後は、こんなことを言うてました。

 「まだまだ強くなれると、シンプルに感じている。唯一無二になれるよう、周りに“ああいうボクサーはいないな”と言ってもらえるように頑張りたい」

 「僕が王者でいるなら、世界戦が続く。今はそれを1つ1つ、理解と覚悟と感謝の気持ちで戦っていくだけです。その世界戦が統一戦になれば、気持ちが“倍”になるという感じ」

 引退決めてる人のセリフと思えます?

 復帰すると思う根拠をもう1つ。引退後について「次のステージに進むビジョンはできています。応援していただいた皆さんの期待を裏切ることなく、さらに期待を持ってもらえると確信しています」と話してた。ビジョンは具体的には明かさんかったけど、ボクシングとの関係を「それは今は言えない」と否定せんかった。「未練はない」と言いながら、復帰の可能性を「何事もゼロはない」という理由から「ゼロとは言えないです」とも言うた。

 揚げ足取りと指摘されたら、その通りです。でも「井岡さん」が再び「井岡一翔」に戻ると思えて、仕方がないんです。【加藤裕一】