アイスリボン弓李生誕祭のメイン「お菓子デスマッチ」。酢いかのボトルを星いぶきの鼻におしつける柊くるみ(撮影・高場泉穂)
アイスリボン弓李生誕祭のメイン「お菓子デスマッチ」。酢いかのボトルを星いぶきの鼻におしつける柊くるみ(撮影・高場泉穂)

「リングにかける男たち」という題のコラムコーナーですが、今回は女子プロレスと女性ファンについて記したいと思います。

先月28日、プロレス好きの女性の友人に誘われ、女子プロレス団体「アイスリボン」の道場マッチを見に行きました。プロレス担当となり半年がたちましたが、これまで取材機会はなく、道場へも行ったことがありませんでした。一人の客として、3000円のチケットを購入し、参りました。

JR西川口駅を降り、線路沿いの暗い道を10分ほど歩くと、道場入り口の蛍光灯の光が見えてきます。平日の夜。悪さをしているようなワクワクした気持ちで中に入りました。驚いたのは、私たち女性2人組に対する並々ならぬおもてなしでした。見渡すところ大半が常連とみられる男性ファン。その中で受け付けを済ますと、スタッフの方が「女性の方が通ります!」と通路を空け、最前列へと通してくれました。

試合が始まっても、サービスは続きます。第1試合のタッグマッチでは見目麗しいジュリア選手、テキーラ沙耶選手とハイタッチ。大量の菓子を凶器に使用したメインの「お菓子デスマッチ」では、セコンドの星ハム子選手が近くにいる私たちにふ菓子やじゃがりこを「食べます?」と分けてくれました。狭い道場だからこそだったかもしれませんが、選手との距離の近さにぐっと心をつかまれました。

そうしたサービス抜きで、試合自体も見応えあるものでした。試合形式は、3分ごとにタッグパートナーを入れ替えるという「変則タッグマッチ」、出場3人が弓李選手の衣装を着て試合する「弓李なりきりマッチ」など多才。特に前述の「お菓子デスマッチ」は、特に面白く、菓子がリングに散らばるさまは前衛的ですらありました。酢いかのボトルを鼻に押しつける攻撃は本来のデスマッチに勝るとも劣らない激しさがありました。魅力的な選手も多く、雪妃真矢選手の美しさにほれぼれし、入場曲に戸川純を使う松本都選手のアングラ感と素晴らしい受けにも感銘を受けました。美人、かわいい、キッチュ、ぽっちゃりなどさまざまなキャラの選手がそろい、推し選手を見つけるのもいいと思います。

私自身は、アイスリボンの道場マッチはコアなファンが多いと以前から耳にしていたため、身構えて道場に乗り込みました。しかし、排他的な雰囲気は一切なく、むしろ楽しめました。

まるで「覆面調査」のようになってしまいましたが、ぜひ記事にしたいと思い、女性ファンへのサービスについてアイスリボンに問い合わせると広報の方から以下、丁寧な返答が送られてきました。

「道場マッチは自由席となります。基本は、チケットの購入順の整理番号で、好きな席に座れます。早く前売りを買った方が、好きな席を確保出来る。その中で、女性、女性を伴う男性(1人に1人)、中学生以下のお子様をお連れの方は整理番号に関係なく、優先的に着席が可能となっています。これは、今の道場が出来る前から(09年道場設立以前から)行っています。その他、後楽園ホールや横浜文体といった大箱での大会では、レディースシートとして、割引(&記念品進呈の場合もあり)を行っています。女性ファンの割合は1割に満たない状態です。(ニコニコの動画視聴などでも、女性2割に満たないなど、圧倒的に男性が多い状況)。そのために、女性に来て欲しいと、ずっと(サービスを)行っていますが…。(客席の雰囲気もありますし、またレスラーに憧れて目指す女性が出て来ないとダメなので)。ここ数年のプ女子もあり、若干増えましたが、劇的な増加は無いです。以前にTBSの番組企画で、女性限定の興行を行ったのですが、その時の会場の盛り上がりなどすごかったので、コンテンツ的には、女性(プ女子)にも受け入れられるとは思っています。とにかく、見てもらう、会場に来て欲しいと思います」

確かに、新日本、全日本、ノアなど男性のプロレス団体の客席には女性ファンが多数いますが、アイスリボンに限らず女子プロレスの興行で女性ファンの割合は私の見た目でかなり少ないです。

美しく、激しく戦う女性を見て燃える(萌える?)心情は男性、女性関係ありません。かつて長与千種とライオネス飛鳥の「クラッシュギャルズ」は、熱狂的な女性ファンに支えられていました。アイスリボンの方が言うように、とにかく一度見ればはまる方も少なくないでしょう。「リングにかける女たち」に女性が熱狂する。そんな風景がもっと増えることを期待します。【高場泉穂】

アイスリボン弓李生誕祭のメイン「お菓子デスマッチ」の途中で、セコンドの星ハム子からもらったふ菓子(撮影・高場泉穂)
アイスリボン弓李生誕祭のメイン「お菓子デスマッチ」の途中で、セコンドの星ハム子からもらったふ菓子(撮影・高場泉穂)