8日に予定されていたボクシング日本ライトフライ級タイトル戦が中止となった。

挑戦者の大保龍斗(横浜さくら)が計量失格のため。前日計量の7日午前に体調不良となり、救急車で搬送された。ジム側は「計量に間に合わせようと点滴治療を受けている」としたが、結局ドクターストップで出頭しなかった。

V2戦だった王者堀川謙一(三迫)はリミットの48・9キロでパスしていた。中止は決定的も「絶対に勝ちます」と拳を握り締めて会場を後にした。時間の猶予はあり、正式決定ではなく、気持ちを切らすまいという姿勢、努力が手に取るように見えた。

試合当日に堀川はWBC世界同級王者拳四朗とスパーリングを披露した。7月にV6に成功したばかりの拳四朗はだいぶ太めで「恥ずかしい。内緒でお願いします」と苦笑いしていた。堀川はスピードある動きでいい出入りも、徐々に相手ペースに。どうも気持ちが入っていないように見えた。

スパー後に「申し訳ないという気持ちでスパーしていた」と心情を吐露した。「チケットを購入してくれた方を裏切る結果になってしまって、申し訳ない」と謝罪した。彼に責任はないはずだが。

堀川は続けてリング上から訴えた。「最近ウエートが作れないとか、キャンセルになる試合が多い。試合が決まった時点でリングに上がるのはボクサーの責任。責任を持ってリングに上がらないといけない」。

日本ボクシングコミッションがこのほど19年度版ルールブックを発売した。改定は3年ぶりだが、大きな変更点は計量。「ボクサーの体重が契約体重の3%以上超過した場合、当該ボクサーは計量失格となり試合に出場できない(試合中止)ものとする」とされた。

すでに昨年から施行されている。3%以上で中止となった例はまだないが、計量失格や棄権が増えている。会長、マネジャー、トレーナーらのジムは、選手の健康管理義務があるはずだが、選手任せのジムも多いと聞く。体重計のないジムもあるという。

18年に前世界王者山中が再戦となったが、王者ネリが体重超過した。山中が「ふざけるな」と吐き捨てたシーンは、いまだに脳裏に残る。もう喉元過ぎれば、という状況では困ったものだ。

堀川はここまで56試合をこなし、これは現役最多を誇る。3年前に移籍した39歳で、すでに原則定年の37歳を過ぎている。それでも今年3試合目と精力的だった。WBCとIBFで5位につけ、世界が目標だからだ。貴重な1試合がなくなった大ベテランとしての大人の苦言。いつもながらとも言えるが、選手はあらためて肝に銘じるべきだろう。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)