着物姿が多いと思ったら、和装デーだった。2年前に始まった和服来場者に特典がつく企画。力士以外は審判、行司、呼び出しに出方が和服も場所で着替える。着物で場所入りするのがNHK解説者の元横綱北の富士さん。「年になるとこっちの方が楽だ」そうだ。

 あいさつした親方が振り返って、後ろ姿を見てつぶやく。「格好いいなあ」。ラジオ解説の日はラフなジーンズの時もある。両国近辺でキャップをかぶってウオーキング姿も見かける。親方衆があこがれる粋な存在だ。

 同時昇進した盟友の玉の海が現役中に急死した。これが尾を引いて優勝は10回止まりも、土俵内外で話題を振りまいた。夜の帝王と呼ばれ、レコードを何枚も出し、断髪式では白いタキシードで歌った。解説はズバズバと辛口で、酒席では実に軽妙。面白さは今まで飲んだ中で3本の指に入る。

 2横綱を育てたが、予定通り50歳で部屋を譲った。理事候補を外れるとスッパリ退職。今はご意見番と言える。同期生で仲のよかった元小結のタレント龍虎さんが昨年亡くなった。弔辞で「まだ夢がある。日本人横綱を見届けてそちらに行く」と読んだ。73歳。だいぶ長生きできそうですね。【河合香】