照ノ富士の快挙を、誰よりも喜んだ人がいる。付け人の駿馬(33)と呼び出しの照矢(32)。ともに間垣部屋時代の苦労を知る仲間だ。優勝が決まった瞬間に抱き合った駿馬は目頭を押さえ、照矢も感情を抑えながら、グータッチで祝福した。

 13年の春場所後に部屋が閉鎖される際に「引退か、転籍か」と決断に迫られた。「やってみてダメなら、引退すればいい。行ってみよう」と駿馬が音頭を取り、転籍した。2人は口をそろえて「あっという間だった」と振り返った。過去にも元十両若天狼の付け人を務めたことのある駿馬は「新十両から、番付を上がるのが早すぎた。目まぐるしく変わっていくので。こっちも勉強になります」と苦笑いする。先場所は白鵬を破る快進撃で周囲の注目度は大きく変わった。

 2年前の決断がなければ、この日は訪れなかったかもしれない。照矢は「遠くに行ってしまったような気がする。ガナはガナでいてほしいなあ」と、少し寂しそうな様子。駿馬は「転籍してよかった」としみじみ話した。苦楽をともにした兄弟子の思いは、ひとしおだった。【桑原亮】