びん付け油のにおいが浪速に春を告げるとされる。その春場所は終わったが、かぐわしいにおいはまた半年後に香る。10月16日に同じ会場のエディオンアリーナ大阪で秋巡業「なにわ場所」が開かれることになり、早くも告知されている。

 地方巡業は、本場所へ来られない人に向けた興行の意味も大きいため、同じ会場で行われるのは珍しい。64年に、当時名古屋場所が開かれていた金山体育会館で元関脇若前田の断髪式などはあるが、巡業となると「あまり記憶にない」と相撲協会広報部は言う。

 では、と調べると90年代前半、秋巡業に組み込まれたトーナメント戦が、現会場の大阪府立体育会館で開かれていた。93年10月にはともに大関の若貴兄弟が決勝で戦い、弟の勇み足で兄が勝っていた。若貴人気がひときわ高い時期だった。

 担当の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は今回も「相撲人気もあって、お客さんに喜んでもらいたいという勧進元の思いです。本場所と違う形で触れ合ってもらえたら」と願う。「春は花 夏ほととぎす 秋は月-」とは日本の四季を歌った曹洞宗の開祖道元の名歌。今年の浪速の四季は、相撲に彩られる。【今村健人】