稀勢の里の綱とりは、何とか名古屋へ持ち越されることになった。千秋楽は見事だったが、どうしても13日目の白鵬戦が頭に残る。得意の左四つから右上手をつかんだ時は「勝てる」と感じた。だが、次の瞬間、期待は無残に打ち砕けた。

 支度部屋でテレビを見た豪栄道は「あの体勢になった稀勢の里に勝てるのは、横綱(白鵬)だけ」と言った。白鵬は、あえて左四つになったと言う。力の差を見せつけられ、何とも言えない気分になった。

 取組後「横綱白鵬を倒すのは日ごろの行いがよくなければ」と言った白鵬には、序盤駄目押しを重ねただけに素直にはうなずけないが、強さはやはり別格だ。

 稀勢の里も深い四股の回数を増やし、以前より笑顔も増えるなど、徐々に変化はしている。だが、まだ何かが足りないのだろう。九重親方(元横綱千代の富士)は「(昇進前の)私は自分からお願いして横綱の稽古場に行った。胸を借りないとだめだ。稽古をやれば、いい結果に跳ね返ってくる。チャレンジしないと差は縮まらないよ」と話していた。白鵬が嫌がるくらい出稽古を重ねれば、変化は変貌となり、綱を手にする「変革」の時が来ると信じたい。【木村有三】