自らの殻を破るべく、1人の青年が角界の門をたたいた。新序出世披露で1番出世を果たした川口(15=式秀)は「いよいよという感じです」と、豊桜の化粧まわし姿で満面の笑みを見せた。だが、各部署へのあいさつ回りでは緊張もあってか「どもってしまいました。苦しかった…」。苦笑しながら脂汗をぬぐった。

 小学校高学年の時、自閉症と診断された。中学ではいじめにも遭ったという。「1年ぐらい人間不信だった。母親さえ信じられなかった」。転校した中学と鹿児島城西高では特別支援学級に通ったが「歴史を勉強したくて。でも歴史の授業はないと言われたので」と高1で中退。夢を失いかけた時、幼少期にテレビで見ていた北桜(現式守親方)を母親が紹介してくれた。

 183センチ、111キロ。少林拳、水泳、ゴルフ、砲丸投げなど多彩な経験を持つが、前相撲は3戦全敗だった。戦艦が大好きで、特に好むのは「金剛型4番艦霧島」。神懸かった活躍に憧れ「誰にもできない自分の相撲を取りたい」と意気込む。部屋には「いじめ=クビ」という厳罰もあり、安心して稽古に精進できる。「充実しています。今思えば、変な夢を見ていたのかな」。夢の始まりは、ここからだ。【桑原亮】