世間で言うびん付け油の香りとは、力士の代名詞。まげ結いに使い、つばきのような甘い香りを漂わせる。だが、これからは少し変わってくるかもしれない。

 国技館で販売ブースを持つベースボール・マガジン社は5年以上前から、びん付け油の「オーミすき油」を扱っている。1箱70グラムで1100円。昨年秋場所で250個売れたが、今場所は10日目で同数がはけた。担当者は「ないとお客さんに怒られる商品。年々購入者が増えている」と明かした。一般人が数多く求めるようになった。

 では、用途の目的はいったい…。力士が長い髪から落とすのに、シャンプー1本を使うほどの強い油。30年以上前から全国で唯一の製造元である都内の島田商店は「油性ポマードのように軽くつける人もいるようですし、におい玉のように持つ方もいる。においを楽しむ人が買われていくようですね」と話した。ベースボール・マガジン社の担当者も「整髪料として使うより、芳香剤としての使用をお勧めしている」と言う。

 びん付け油の香りに鼻孔をくすぐられて振り向けば、まげのない一般人だった-。そんな日常が増えるかもしれない。【今村健人】