三役経験者が今場所、若い衆の象徴の黒まわしを締めて戦っている。幕下に元関脇豊ノ島。そして、2場所ぶりに復帰した三段目の元小結常幸龍がこの日、電山を寄り切って1年ぶりに勝ち越した。「番付が下がっても、勝ち越したらめっちゃうれしいですね」。

 昨年初場所の遠藤戦で右膝を痛め、無理した2日後に日馬富士から初金星を奪ったが結局、休場した。治らぬまま今年初場所に再び負傷。十両に下がっても勝てず「この状態で取り続けるより、1回落ちてでも、また上で取りたい」。6月3日、前十字靱帯(じんたい)と半月板を手術した。

 幕下以下に下がれば給料がない。だが、妻を始め、周囲が背中を押してくれた。後援者に「何があっても面倒みる」と言われたときは電話口で泣いた。今「『明るくなった』と言われるようになった」と笑った。

 前日、日大後輩の遠藤が白鵬を倒した。「うれしい半面、先に勝たれてしまって悔しい気持ちもある」。栃ノ心、千代の国ら幕内経験者がけがから復活した姿が励み。元三役の返り咲きは栃ノ心の幕下55枚目からが戦後最大。三段目からはいない。前相撲から最速9場所で新入幕を果たした男は「次は栃ノ心関の記録を抜く」。それが胸にある。【今村健人】