悲願をかなえた弟弟子の涙を見て、かつて一緒に汗を流した部屋付きの西岩親方(40=元関脇若の里)も胸がいっぱいだった。

 「まだ実感が湧かない。信じられない。一番の要因は、他の3人の大関が先に優勝して、自分だけ優勝していない状況で、その悔しさ。そのことが稀勢の里に火を付けた」

 稀勢の里が15歳で初土俵を踏んだ02年春、25歳だった若の里は既に小結だった。「僕が一番元気なころに入ってきた新弟子。毎日のように、稽古つけましたから」。ぶつかり稽古で倒れると、気合の蹴りも浴びていた弟弟子。それでも、くじけず立ち上がってきた。

 「ついてきましたからね。毎日泥だらけ、血だらけでになってやってました」

 入門から6年、08年初場所で初めて番付で追い越された。「これは強くなるなと思ったら、あっという間に強くなった」。うらやましかったのは、ずぶとさだ。「(血液型が)バリバリのB型。普段の生活からずぶとい。スポーツ選手はB型で大成する人が多い。僕はO型、だから関脇止まり。B型だったら、もう1つ上に行けたかもしれないな。ハハハ」。元兄弟子は目を細めつつ、注文も忘れない。「これで終わりじゃない。これからが大事だ」。【木村有三】