ファンも親方も力士も、負傷を負いながらも土俵に立った新横綱稀勢の里を、さまざまな思いを胸に見届けた。

 相撲ファン歴30年で稀勢の里の場所入りを見届けた50代男性は「これで優勝したら貴乃花の再来や。しんどいと思うけど楽しみやわ」と期待した。一方で30代女性は「休んでほしい。だけど見られるのはうれしい。でも来場所休場になったら寂しい」と複雑な思いだった。

 土俵下に落ちた稀勢の里の至近距離にいた片男波審判員(元関脇玉春日)は「昨日はかなり痛そうにしていた」とその時の状況を話した。だからこそ出場について「覚悟があるから土俵の上に立つんじゃないですかね」と横綱として責任を果たす姿勢に感心した。

 この日胸を合わせた鶴竜は、横綱同士だからこそ分かる葛藤を明かした。「まぁ同じ立場だったら、出るかもしれない。諦められないよね。優勝の可能性があるからね。悪くなるかもしれないけど」と自分のことのように話した。

 本来の力とはほど遠い相撲で2敗目を喫した稀勢の里。読者のみなさんは、どのように感じただろうか。【佐々木隆史】