大相撲九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)で楽しみな記録がある。初土俵からの連勝記録と、序ノ口からの連続優勝記録だ。この記録に挑むのは、九州場所で幕下昇進が確実な三段目炎鵬(23=宮城野)。横綱白鵬の内弟子として春場所で初土俵を踏み、序ノ口の夏場所、序二段の名古屋場所、三段目の秋場所で全勝優勝して、昭和以降7人目となる序ノ口からの3場所連続優勝を果たした。さらに、初土俵からの連勝を歴代5位となる「21」に伸ばした。

 初土俵からの連勝記録の1位は元小結板井の「29」だ。九州場所で全勝しても届かないが、まずは2位の佐久間山(現常幸龍)の「27」を追いかける。抜くのには全勝が条件。そうなれば優勝の可能性も大きい。序ノ口からの4場所連続優勝となれば昭和以降では、元横綱羽黒山以来2人目の快挙となる。

 169センチ、94キロと小兵ながらに快進撃を続ける一因には、やはり白鵬の存在があるからだ。「一番一番にかける思い、集中力がすごい。私生活も徹底しているから普段の力が出せていると思う」。白鵬の付け人を務めているからこそ、肌身で感じるものがあった。さらに秋場所中盤に休場していた白鵬から直接、部屋で声をかけられたという。「見てるぞ、って言われました。まさか見てくれてるとは思わなかった。一気に気持ちが引き締まりました」と気合が入っていた。そして、三段目優勝決定戦を制した千秋楽で「横綱からも『来場所はこんなものじゃないぞ』と言われました。今は休みたいけど、休んでる暇もない。明日からでも稽古をやりたい」と浮かれる気持ちを抑えて、先を見据えていた。

 角界入り後に入所した相撲教習所を秋場所後に卒業したため、白鵬の付け人として秋巡業に参加している。初めての巡業参加となった15日の金沢巡業で早速、幕下の申し合い稽古に入ると、幕下上位でしのぎを削る先輩力士らから強烈な張り手やかち上げで“歓迎”を受けた。手荒い歓迎ぶりに苦笑いを浮かべたが「重さは感じたけど、感覚はつかめた」と手応えを口にした。残り約3週間でさらに稽古を積んで、1年の納めの場所で有終を飾る。【佐々木隆史】