平幕の琴勇輝が、相撲愛全開で土俵に戻ってきた。4日目に「右踵腓靱帯(しょうひじんたい)損傷により、1週間の休業・療養が必要である」との診断書を提出して途中休場したが、この日に再出場。再出場は今回が3度目で、幕内で3度の再出場は平成以降では最多となった。

 途中休場するとそのまま休場する力士が多い中、なぜ琴勇輝は再出場するのか。この日は鋭い出足で攻めたが、千代の国に押し出されてたまり席にまで転がり落ちた。支度部屋で、右足首に巻いてあるテーピングを外しながら言った。「どんな形でも相撲を取りたい。勝ち負けは関係なくて、土俵に上がりたい」。相撲を取りたい純粋な気持ちが、琴勇輝の背中を押す。

 今場所はいまだ白星がなく、さらに黒星が増えると来場所は十両陥落の危機だ。しかし、心強いデータがある。再出場した過去2場所(15年春、17年夏)は偶然、今場所と同じ西前頭12枚目で、再出場後も白星を重ねて翌場所は幕内にとどまっている。「知らなかった。いいですね、それ。そのジンクスに応えられるように頑張ります」。最後まで諦めなければ、土俵の神様がきっとほほ笑んでくれる。【佐々木隆史】