元幕内で東幕下20枚目の豊響(33=境川)が生命の危機を乗り越え、関取復帰を目指している。現在3戦全勝と、3場所ぶり勝ち越しに王手。3勝目を挙げた5日目は「久しぶりに自分らしい相撲を取れた」と立ち合いでぶちかまし、前に出る快勝に笑顔を見せた。

 1月4日の稽古中、急に発病した。師匠の境川親方(元小結両国)は「少しのことでは痛がらないのに、うずくまって動けなくなったので、ただごとではないと思った」と、すぐに救急車を呼んだ。「心室頻拍、心房細動」いわゆる不整脈だった。1週間後に退院し、一命は取り留めたが、医師から心臓にペースメーカーを埋め込むことを勧められた。それを受け入れれば引退-。1月初場所を全休して様子を見ると快方に向かい、3月春場所はぶっつけ本番で臨んで2勝5敗。稽古再開は4月中旬だった。

 実は倒れた5日後に第1子の長男太綱(たづな)くんが誕生した。里由貴夫人が帰省中の2月上旬まで、再発を懸念して部屋で集団生活。下積み時代を思い出すと同時に「名前に『太』という字があるのにガリガリってわけにはいかない」と、愛息を不自由なく食べさせる決意が芽生えた。同じく関取復帰を目指して幕下で3連勝中の豊ノ島とは「全勝同士で対決」と約束を交わした。周囲の支えに感謝し「もう1度幕内で」と誓った。【高田文太】